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静的な使用の場合、引張ばねの許容せん断応力は、線径-許容せん断応力の図(JIS B2704のp.17 図11)の値を、熱間成形(主にばね鋼鋼材(SUP材))であれば67%、冷間成形であれば80%にした値が許容せん断応力になります。ただし、この応力の時の荷重が耐荷重ではなく、この許容せん断応力の80%の値が使用最大せん断応力であり、この時の荷重を耐荷重(使用最大荷重)としています。圧縮ばねより許容応力について安全をみているのは、フック部の応力が高くなることを考慮しているためです。
さらに安全をみるのであれば、JIS B2704の解説や弊社HPの引きばねの技術・計算情報に記載されているフックの曲げ応力やせん断応力の計算式を参考に応力を算出し、JIS B2704 p17 図11、p18 図12を超えないことも含めて確認し、耐荷重(使用最大荷重)を設定するとよいです。
動的の場合は、静的の場合と異なり、形状が決定しても耐荷重(使用最大荷重)は、1つに定まりません。期待する寿命に加え、使用する範囲の最小応力または最大応力のどちらかの応力がわかることで初めて、もう一方の応力の設定範囲、つまり設定可能な荷重の範囲が決まります。その設定のためには、せん断応力の疲労限度線図(JIS B2704 p20 図13)をもとに設定する必要があります。この線図の利用方法については、JIS B2704の例を参照願います。また、この評価はコイル部のみの評価であるため、より安全をみるのであれば、
静的の時と同様に、フック部の応力について使用範囲の最小と最大の応力を算出し、JIS B2704 p20 図13、p22 図14の疲労限度線図をもとに使用範囲を設定するとよいです。
以上よろしくお願いいたします。