【ご相談内容】 ばね初心者 2022/6/14(火) 2:04
マットレスに使われている硬鋼線について質問です。
「SWRH 72 B C」などとありますが、反発性(72)と耐久性(B)と強度(C)と紹介されていることが多く、それぞれの意味合いの違いを教えていただけますでしょうか?
反発性とは?耐久性とは?強度とは?という定義と、反発性や耐久性の仕様が強度に影響するのか?という点なども教えていただけますと幸いです。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
【返答】 ばねっと君 2022/6/14(火) 3:49
ご質問いただきありがとうございます。
「SWRH 72 B C」の表示をもう少し詳しく説明しますと、「JIS G3506(硬鋼線材)に規定される21種類の
の鋼種の中からSWRH 72 Bを使用して製造された、JIS G3521(硬鋼線)に規定される3種類の鋼種の1つ
であるSW-Cを使用している」ということになります。
表示の“72”は、硬鋼線材の炭素成分が、0.72%前後(0.69~0.76%)であることを示しています。
炭素の含有量は、硬鋼線製造時の熱処理において、材料強度の指標である引張強さに
影響し、炭素量が多いほど、高い値になります。SWRH 72 B は、硬鋼線材の中でも炭素量が多い
部類に入るため、引張強さを高くすることができる鋼種です。
反発性については、ばねからの反力を指すと思われますが、反力に影響する要素は、材質(横弾性係数)、
材料の太さ、コイル径の大きさ、有効巻数の4つのパラメータによって決定されるばね定数、
さらにはたわみ量となります。数字を取り上げていることから、ばね定数とそれに関連するパラメータを
取り上げたいわけではないと考えられます。
炭素量が多い部類であるため、引張強さが高い、つまり、ばねとしてはたわみ量を多くとることが
可能なため、結果として反発力も大きくすることができる、ということを伝えたいのではないかと
思います。
表示の“B”は、硬鋼線材の鋼種の中に、SWRH 72 Aという鋼種もあり、違いは
マンガンの成分量の違いにあります。
“A”と表示される鋼種は、硬鋼線材のマンガン成分が、0.30~0.60%となります。
一方、“B”と表示される鋼種は、硬鋼線材のマンガン成分が、0.60~0.90%となります。
マンガンは、熱処理による材料の引張強さの向上にも寄与しますが、靭性(粘り強さ)にも寄与します。
マンガンが多い方が靭性が高くなるため、使用時にばねが折損しづらくなります。
耐久性については、“A”と表示される鋼種より、“B”と表示される鋼種の方が、マンガンが多いため、
靭性が高く使用時にばねが折損しづらいことを意味しているのではないかと思います。
ただし、ばねの耐久性は、ばねが受ける荷重や引張強さも考慮する必要があります。
表示の“C”は、JIS G3521(硬鋼線)には、SW-A、SW-B、SW-Cの3つが規定されており、この中の、
SW-Cの“C”を示していると思われます。3つの鋼種の違いは、引張強さの違いにあり、
同じ線径であれば、SW-A≦SW-B≦SW-Cとなります。
強度については、基本的には材料において引張強さを意味しますので、硬鋼線の中で、
引張強さの高い鋼種を使用していることを意味しているかと思います。
ただし、引張強さは、先に述べた反発力に関わってくる要素でもあります。
最後に反発力は、マットレスに寝た時に感じる硬さや沈み込み量に影響し、
耐久性は、購入時からの寝心地の変化(マットレスのへたり、形状の維持の程度)に
影響します。
また、反発力や耐久性が強度に影響するというよりは、強度によって、反発力の限度が決まり、
耐久性は、強度と反発力(ばねが受ける力)によって決まります。これらの3つの要素を考慮して
最適なばね形状が決定されます。
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