【ご相談内容】 ばね初心者 2021/7/27(火) 11:05
設備架台の脚とデッキを固定するために 11T M20 の六角ボルトと皿バネ(ミスミSRBN40-B)を使用して固定しています。
お客さんから「皿バネではなくスプリングワッシャーに交換して欲しい。」と言われています。
個人的には問題が無いとは思うのですが、客先を説得する材料が無く困っています。
物を固定する場合に皿バネの使用することはNGなのでしょうか?
問題無いのであれば皿バネの方が良いという技術的もの(数値で示せるとベスト)は無いでしょうか?
申し訳ありませんが回答頂けると助かります。
以上、宜しくお願い致します。
【返答】 ばねっと君 2021/7/29(木) 20:51
ご質問ありがとうございます。
スプリングワッシャー(ばね座金)と皿ばねのどちらがよいかという点については、
採用される方が何を重視するかによって、判断が分かれますので本回答での言及は控えさせて
いただきます。
以下の3つについて回答します。
①座金として使用されたときの各荷重値
②座金としての機能
③コスト
①座金として使用されたときの各荷重値
スプリングワッシャーも皿ばねも座金として使用され、完全に圧縮された場合の実荷重は、
計算で求めることはできません。しかしながら、どちらも目安程度であれば算出することができます。
実際のスプリングワッシャーは、ボルトの軸方向に圧縮されるにつれて荷重の作用点が移動することや
接触点が一定でないことなどから厳密な荷重計算できません。そこで、荷重は、スプリングワッシャーの
切口部の端末のみに受けるという条件を適応すると以下の計算が成り立ちます。
δ=1.812*P*D^3*β/(G*b*t^3)
↓
P=G*b*t^3*δ/(1.812*D^3*β)
β=(11.8-2.52*(t/b)+0.21*(t/b)^5)/(4-2.52*(t/b)+0.21*(t/b)^5)
δ:たわみ(mm)、P:荷重(N)、D:コイル平均径(mm)、G:横弾性係数(N/mm^2)、b:板幅(mm)、t:板厚(mm)
これをもとにM20用2号のスプリングワッシャーの荷重値を計算すると1489Nという目安の荷重が
算出できます。実際は、JIS B1251の規格にもあるように試験荷重負荷後の自由長が完成時より、
低くなることから、密着まで使用するとへたりが発生し、また形状にも誤差がありますので、
実荷重とは大きく異なる可能性はあります。
皿ばねの荷重は、弊社HPの技術計算情報に掲載している計算式をもとに密着たわみを入れることで
計算できます。しかし圧縮時の実際の荷重は、計算値よりも強い値になり、さらに密着で使用すると
へたりが発生する可能性があり、密着時の荷重の計算値はあくまで目安となります。
質問に記載して頂いたミスミ様の規格品ですと密着荷重は、9156Nとなります。
各荷重値を比較するとスプリングワッシャーに比べ皿ばねの方が約6倍強い値になります。
一方でM20(11T)を適正トルクで締め付けた時の締付軸力は、資料によって様々な値がありますが、
ある資料では161181Nという値になります。これは、スプリングワッシャーの目安の荷重値の
約100倍であり、皿ばねの目安の荷重値の約18倍であるため、部品同士の締結力は、
スプリングワッシャーや皿ばねにはよらず、適切にボルトを締めることにあることがわかります。
ばね性のある座金としての作用としては、振動などでボルトが緩んできたときに皿ばねの方が
スプリングワッシャーと比べ荷重が強いので摩擦力強くなり、より脱落し難くなるということは
あるかと考えられます。また、皿ばねは同じ向きに複数枚重ねて使用することで、より荷重を
強くすることが可能です。
②座金としての機能
荷重での際については、①のとおりとなりますが、その他の面では、
座面が柔らかい場合、スプリングワッシャーだと締結時に食い込み、ゆるみを防止できる
効果が期待できます。しかし座面の材質や硬さ次第となります。また、食い込むということは、
相手を座面をきずつけることにもなるため、それを嫌う場合は不適切と考えられます。
皿ばねの場合、スプリングワッシャーと比べ外径が大きいので、場合によっては周辺部品との
緩衝を気にする必要があるかもしれません。
手締めするときに、スプリングワッシャーは切口の動きを見ることで、締め込みができているか
分かりやすいですが、皿ばねはそういった動きが見難いということはあるかもしれません。
③コスト
コスト面では、スプリングワッシャーの方が皿ばねに比べかなり安く、
どんなに安くても単価で100円以上の差が確実に出てくるかと思います。
※ご質問と回答は一般公開されますので特定される内容には十分お気をつけください。