ご質問いただきありがとうございます。
まず、ピアノ線に必要な熱処理は、低温焼なましとなります。そのため記載していただいた
熱処理の中のどれにも当てはまりません。近いワードで焼なましがありますが、温度が異なります。
低温焼なまし温度は、静的な使用条件(圧縮の頻度が少ない)の場合は200~250℃、静的な使用条件
(圧縮の頻度が多い)の場合は300~350℃となります。熱処理時間は、20~30分程度です。
冷却は、空冷(熱処理炉から取り出してそのまま冷めるまで放置)となります。
今回実施された処理は、記載された熱処理のうち、焼入れに近い処理となります。
もし、コンロで加熱された際に、ばねが赤くなるまで加熱されて水冷されたのであれば、
焼入れと同様の作業です。ばねが赤くなっているのであれば、温度は800℃程度になります。
鉄鋼材料なのでこの作業でも強度は出せますが、ピアノ線は、材料の時点でばねとしての
強度を有するように加工された材料になるので、焼入れをするとその強度が無駄になってしまいます。
若干話はそれますが、焼入れだけでは硬すぎるため、ばねとしては靭性をもたせるため、
焼入れの後、焼戻しを基本的には必要とします。
いかに低温焼なましをするかということですが、製造現場では温度の均一性や時間を管理された炉で
処理をするため容易に処理ができます。上記に記載した温度と時間を身近なもので確保するとなると、
以下の方法で実施すれば、その条件に近くなるかと思います。
最高温度が250~300℃まであるオーブン
1000W程度のトースター
フライヤー(揚げ物をするときの高温の油の温度)
※電子レンジは厳禁です。
いずれも、置く位置によって温度ムラがあったり、ON・OFF制御で温度の上下があると思いますので、
ベストな状態ではないかと思いますが、まだましな状況かと思います。
上記の処理で性能が担保できるかは不明ですので、自己責任でお願いします。
また、ばねを使用してみてへたったということですが、この件に関しては
熱処理不良ということも考えられますが、ばねの設計が適切だったか、
という問題もあります。
どこまでの圧縮であれば、もとの形状にもどるのかということについて、
応力評価をしてみて、その後ばねを作ってみてください。