【ご相談内容】 ばね初心者 2020/5/20(水) 13:26
質問なのですが、JIS規格(JIS-B2706)の皿ばねを直列と並列に積み合わせた場合、皿ばね単体の全高や板厚などの誤差により、積み上げ高さが、2㎜程大きくなってしまいます。
しかし、皿ばね単体の各部寸法を計測したところ、すべて寸法の許容差に入っています。
そこで、質問なのですが。
①積み上げ高さの許容差は、決まっているのでしょうか?
②積み上げた皿ばねを圧縮した時の荷重やたわみ量は、JISの計算値通りの結果が出るでしょうか?
③JISの荷重計算値は、積み上げた時の摩擦力を考慮しているのか?
また、直列に積み上げる際のメリットがたわみ量を大きくしたいと理由だとして、
たわみ量を大きくしたいメリットとは、何でしょうか?
【返答】 ばねっと君 2020/5/20(水) 15:04
ご相談いただきありがとうございます。
それぞれの質問に順番にお答えします。
①積み上げ高さの許容差は、決まっているのでしょうか?
積み上げ高さの許容差については、一般的な基準はなくばねメーカーと
お客様の契約内容によるかと思います。
また積み上げて圧縮した際の荷重の許容差もJIS B 2706の“荷重の許容差”の項に
記載のとおり、「受渡当事者間の協定による」とありますので、
一般的な基準はありません。
弊社では、積み上げて圧縮した際の荷重に許容差がある場合、
積み上げ高さの許容差は設定しないことが多いです。
しかし、お客様のご要望でどちらにも許容差を設定する場合もあります。
②積み上げた皿ばねを圧縮した時の荷重やたわみ量は、JISの計算値通りの結果が出るでしょうか?
JIS B 2706にある標準的形状に近い皿ばねであれば、基本的に加圧時の荷重特性は、
計算に近い値になるかと思います。
しかし、外径と内径の比、または全たわみと板厚の比によっては計算値から離れた値に
なることもあります。
また、圧縮のたわみ量が小さい段階では、皿ばねのひずみの影響でしっかりと面当たりして
変形しないため、荷重が小さくなる傾向にあります。積み上げる枚数が多いとより顕著になります。
さらに、密着に近くなれば荷重が急激に増大します。
よって、単体で荷重特性を満足していても積み重ねた状態では満足しないケースもあります。
弊社では、上記のことを踏まえ設計提案及び組み合わせでの荷重調整を行い、納品しています。
③JISの荷重計算値は、積み上げた時の摩擦力を考慮しているのか?
皿ばねは、重ねて使うと摩擦の影響によりヒステリシスが発生しますが、
このときの減圧時の荷重については、JISの計算では考慮されていません。
摩擦の状況は、並列枚数や表面の潤滑油やグリース、コーティングの種類によって
異なりますので、メーカー独自で補正するなどノウハウの部分になるかと思います。
弊社では、減圧時の特性を求められる場合がありますので、それを考慮した
設計提案をしております。
最後に、たわみ量を大きくするメリットについてですが、
お客様の用途による部分が大きいので明解な回答は致しかねます。
例えば、皿ばねをワッシャーのようにお使いになる場合、たわみ量は数mm程度でよいかと
思いますが、マシニングセンタでのツールチャック用の皿ばねでは、10mm前後の
ストロークが必要になるため、相対的にたわみ量は大きくなります。
どちらかというと、同じスペースにおいてコイルばねが10mmストロークした場合に
比べ、皿ばねでは数倍の荷重を得ることが可能になる点がメリットかと思います。
※ご質問と回答は一般公開されますので特定される内容には十分お気をつけください。