第3話
【カメラマンの目】安全索道株式会社様
琵琶湖の南東に位置する守山市の、閑静な区域に安全索道の工場があった。
取材当日、早めに到着して駐車場で待機していると、夏の日差しの中、社屋からぞろぞろと社員たちが広い駐車場に集まってきた。すると、一人の社員が号令をかけラジオ体操が始まった。その中心で汗をかいていたのが、後で取材をさせていただいた西川社長その人だった。
一つ屋根の下
西川社長の取材を終え、工場へと案内していただく。
大きな開口部を持つ工場の入口を入ると、巨大な円形の造形が目に飛び込んできた。それは、リフトやロープウェイのワイヤーを回転させる巨大な滑車。溶接と強度補強などの作り込みに圧倒された。
工場というと、最近では最新鋭マシンが粛々と動いているイメージがあるが、ここは違った。いい意味での驚きだ。
大きな空間の中、使い込まれた道具、そこで働く人々は、まるで自分の工場(個人の工場)のように仕事に取り組んでいる。一つ屋根の下に、色々な工場が集まっているという感覚だ。
溶接をする人、塗装をする人、磨きを入れる人、削り出す人・・・それぞれの作業を熟練の職人たちがキラキラした眼でこなしているのだ。もちろん、最新鋭の機械もあるが、たとえ古くとも、それぞれの機械たちはしっかり手入れされ、いぶし銀のような表情をしていた。
手垢で研磨されたハンドル
工場の一番奥に、手動の旋盤が鎮座していた。回転用の取っ手は、軍手、手の脂で磨き込まれてピカピカに輝き、これまでの歴史を感じさせる。
その旋盤の傍らに笑顔で立っていた方が、元工場長新原さん。今では工場長という職責からは離れているが、後進の指導育成のために現場に立ち続けているという。
手動旋盤の話をお訊きすると、とても丁寧に解説していただけた。
そして、旋盤の横にある引き出しを開けると、そこには無数のバイト(刃)が収まっていた。「このバイトは、全部僕が作ったものなんですよ。この会社の仕事は、このバイトさえあれば、全部こなすことができるんです」と新原さんは語る。そして「若くてやる気のある人材がどんどん育ってくれるのが一番嬉しいんです。独り立ちした中堅も多くいますが、若い人がこの会社を支えてくれるまで、まだまだ引退はできないですね」と。
自信に裏付けられた表情
工場の中には、黙々と仕事に打ち込む中堅職人の姿、そして若い職人未満のくったくのない笑顔・・・。新原さんが考える技能継承は、次に続く彼らの肩にかかっているんだなと実感した。
工場見学を終え、巨大な滑車の前で記念写真を撮影。
「これは僕がひとりで作ったんですよ」とひとりの職人が笑顔で話しかけてきた。
その笑顔には、仕事に対する誇りと自負が感じられた。ほんとうに、いい会社だな、って感じた瞬間だった。
安全索道株式会社
所在地 〒524-0041 滋賀県守山市勝部町471番5
取材ご協力
代表取締役社長 西川 正樹様 執行役員 生産部長 吉田 博司様
業務部長 藤澤 一弘様 生産部 資材課長 武崎 豊様
取材
東海バネ工業 ばね探訪編集部(文/EP 松井 写真/EP 小川)