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東海バネ工業株式会社

「電気の交差点」を守る男たち | 日新電機株式会社 様

第2話

世界最小への挑戦

「お客様にとっては、できればなくしたいもの。ほしいのは、灯り、空調なのです」

中型変電所に強い 日新電機の軌跡

「お客様にとっては、できればなくしたいもの。ほしいのは、灯り、空調なのです」

日新電機の田村部長は、自社製品をこう表現する。ほしくないものとは、前橋製作所が得意とするGIS(受変電設備)のことである。導入側にしてみれば、設置スペースをとるだけにできればなくしたいが、照明をつけるには必要不可欠なもの。GISがなければ、あかりも、空調も実現しないのである。

そんな、「なくしたいもの」を作り続けて40年、今や、受注件数6年連続トップを誇る。これは、電圧クラス66~77kV級の変電所に納めているGISの売上記録だが、国内に約200カ所ある変電所(66~77kV)のうち、3分の1強のシェアを持っているという。

産業・電力システム事業本部 開閉機器事業部 設計部 部長 田村 好明 様

変電所は電圧の階級により構成されているのだが、第1話で解説したように発電所に近いほど電圧は高く、500kV変電所、超高圧変電所、一次変電所、配電用変電所、そして町中で見かける変電所へいくにつれ電圧は下がっていく。前橋製作所では24~168 kV級を対象にGIS、単体で遮断器などを製造しており、そのなかで得意なのが上記の66~77kVで、配電用変電所にあたる。

そもそも日本の重電市場は、1960年~70年代の高度成長期に行われた大規模な設備投資で、時代ともに成長してきた。その市場のなかでも送変電機器業界はこれまで、生き残りをかけた業界再編成の動きと、グローバル化への模索を続けている。そんななかで日新電機は、業界再編の動きにとらわれることなく、独自技術と独自販売チャネルを積み上げてきた企業だ。東芝、日立製作所、三菱電機といった大手が大型変電所に強い業界構造のなか、中堅の日新電機は、どのようにシェア獲得に戦ってきたのだろうか。

歴史を紐解いてみると、その鍵を握るのは、世界最小への挑戦だった。

すべてを解決した 画期的なGIS

GISとは何か。前回、簡単な記述をしたが、さらに詳しく解説しよう。発電所や変電所に設置されている遮断器や断路器、これらをつないでいる電路などを、ひとまとめにしたものであり、絶縁性能に優れたSF6ガスで充填された密閉金属製容器に収納されている縮小形開閉設備のことを言う。絶縁性とは、電気を通さないことである。

もう少し、わかりやすく説明すると、以前の変電所は、電線や遮断器等がむき出しで置かれていた。多くの場合が屋外に設置されている為、飛来物で停電が起きたり、気候の影響を受け腐食や劣化も激しかった。また、安全上機器の間隔を空けて設置していたため、大きいスペースも必要とした。「危険な上に、スペースを占領してしまう・・・」こうした悩みをすべて解決し登場したのが、GISだ。SF6ガスを使用して機器や電線をひとつに収納したことで、停電や劣化もなくなり、安全性の向上、スペースの縮小にもつながった。さらに、密閉化され汚損の影響を受けないため、メンテナンスフリー。60年代に実用化されて以来、現在はこのGISが主流になっている。
なんとなく、イメージできただろうか。
しかし、これらを一つに収納するといっても、機器の中を流れているのは高圧電流である。それらの機器を集積するには、相当な高度な技術が求められることになる。
まずは、遮断器について説明しよう。

前橋製作所でも単体で製造しているガス遮断器は、絶縁性のある気体(ガス)中で電流の開閉を行うものである。GISとともに縮小化されてきたのだが、電流を遮断する際、開閉器の電極間に発生するアーク放電をいかに消滅させるか、という役割を担う。アーク放電とは、電気機器のスイッチを入れたままコンセントを引き抜く時に出る火花のことだ。逆に、スイッチを切ってコンセントを抜くとアークは出ない。これは電流が流れているかいないかの違いである。高圧の場合、電流が流れている状態でスイッチを開閉すると、アークが切れない。流れっぱなしの状態が続けば、危険な状態になることは想像できるだろう。こうしたアークを遮断するのが遮断器である。

この遮断器だが、ガスの他に、空気、油と3種類がある。前橋製作所でも、最初の取り組みは空気だった。同時平行で、油も実施したが、空気だとスペースを余分にとり、油だと燃えてしまう。「かわるものはないか・・・」と、目をつけたのがガスだった。早速、使用して見ると、絶縁性能は抜群。研究の結果、ガスを採用することとなったのである。

「電気というのは丸いもんが好きなのです。突起があると、そこに電気が集まり放電してしまうのですが、丸いと集まらないんですね。ですから、電気を流す道は、つるつるにしなくてはいけない。扱いが難しいんです」

72年に初のGISを納入にこぎつけた前橋製作所だが、難しい特性を持つ電気を扱うだけに、ものづくりには、かなりの試行錯誤が続いたのだった。

ゴミ管理と機密性の高さが 他社に負けない強み

まず、GISを作る上での最初の課題は、ゴミの排除だった。
部品の組み立て段階で、どうしてもゴミが入ってしまう。表面にゴミがついたまま封じると、そこが突起となって雷のようなものが発生し、停電がおきてしまう。そうなれば、何十万という世帯に影響が出でしまうため、ゴミに対して、敏感になるのは当然のことだった。クリーンルームをつくり、社員教育を強化。肉眼で見えるゴミはすべて取りさらい、それを確認してから封じきる。
『工場にゴミを持ち込まない、発生させない、発生したら直ぐ取り除く』
こうした意識を各ステージにおいて、徹底させていったのである。

ゴミの管理の次は、「いかに気密性を保つか」に難儀した。
気密性とは、封じきった気体が外部に洩れないように、または減圧した内部に気体が流入しないようにすることだ。機器の中は圧力が高いことから、それがじわじわと外に洩れ出し、極端な話、大気圧と同じになると、機器の中で大きな事故を引き起こす要因となってしまう。いかに気密性を保ち、封じきるかが重要なポイントになるのだが、これは設計面、構造面でクリアすることができた。長年の経験から生まれた気密の管理や、仕上げの精度、パッキンの辺の硬度と寸法など、経験に基づいた前橋製作所のスペックができあがっていったのである。

独自のソリューションで 世界最小を実現

「GISというのは、絶縁、開閉、通電の3つのキーワードがあります。絶縁を保つためにガスを漏らさない。開閉はちゃんと動く。通電はしっかりと接触する。この3つの視点で開発を考えているんです」

この十数年で、GISはどんどん小さくなっているのだが、その背景にはコンピュータ解析の3次元化の実用化があった。一昔前、絶縁距離は手計算だった。安全に対するアローアンスをどうとるかに膨大な時間がかかり、「このあたり」というところで実験をし、数字を出していた。それが、三次元のコンピュータのおかげで、「ここまでいける」という距離が簡単に出せるようになったのである。「このあたり」から「ここまでいける」になったことは、非常に大きかった。

一方で、GISが小さくなればなるほど、ゴミの問題はさらに顕著化した。面積が大きかったときは鈍感だったものが、小さくなると突起物に敏感になってしまう。ゴミが引き金となり、ワルさをするのである。ゴミをゼロにすることはできないが、基準値を超えるものは全て取り去る。縮小化とともに、ゴミの徹底した管理能力は、さらに強化されていった。

こうして、「ゴミの問題」と「気密性維持」の成功により、日新電機は顧客から信頼・安心を得ることができた。そして13年前、の GIS(XAE7・66/77万kV)は、ついに、世界最小を実現したのである。

「高い電圧の変電所の魅力的な市場に比べ、電圧が低い変電所になればなるほど、競合も増え、市場価格も下がり、戦いは厳しくなるばかりです。しかし、私どもはもともと、このクラスをターゲットとしてやってきました」

日本の重電メーカーは、社会のインフラを担う産業として、世界に誇る高品質な機器を提供してきたが、90年代になると電力需要の伸び悩みから、大手企業を中心とする業界再編の動きが顕著化した。そんな過当競争のなか、日新電機は、自社で積み上げてきたコンパクト設計を武器に、独自に生きる道を模索したのである。

そこで新たな市場が見え始めた。それは、産業用である。

ここ数年で、66/77万kVの工場や、ビルの地下、大型のショッピングセンターなどの産業用機器の電力設備需要が出てきた。前橋製作所でも、ショッピングセンターへの導入を皮切りに、現在、この分野の数字を伸ばしているところだ。ショッピングセンターでは、スロープの下に設置されているのだが、GISのコンパクト設計が可能になったことが、産業用市場増加の大きなきっかけとなったことは言うまでもない。
こうした新市場に切り込めたのも、コスト競争の厳しい低い電圧の市場で戦ってきたからこそで、その道には省力化の成功があり、電力事業者以外へのターゲットも広がった。今、産業用は、大きく落ち込んだ電力事業者向け市場に比べ、確実に伸びている。

前橋製作所の軌跡をたどってみると、冒頭、田村部長の「お客様にとってはなくしたいもの」といわれた言葉が蘇る。この言葉の裏に秘められていたのは、顧客視点のものづくりにかけた情熱と、信念であった。

第3話は、こだわりの教育に迫る。