第1話
【鉄の鼓動】株式会社神戸製鋼所 加古川製鉄所様
とてつもない空間に、水蒸気が漂い、轟音が響く。まるで、近未来映画のような情景が広がっている。計り知れない圧倒的なスケール感と信じられないような迫力。そこにあるのは、まさに「鉄の鼓動」そのものだ。瀬戸内海は東播磨港。加古川市の海岸を取り囲むように、巨大な高炉がそびえ立つ「神戸製鋼所加古川製鉄所」。年々増加する鉄鋼需要を背景に、この地に生まれたのは1964年のことだった。
オレンジ色の閃光が一瞬のうちに目前を駆け抜けていく・・・
とてつもない空間に、水蒸気が漂い、轟音が響く。
まるで、近未来映画のような情景が広がっている。
計り知れない圧倒的なスケール感と信じられないような迫力。
そこにあるのは、まさに「鉄の鼓動」そのものだ。
瀬戸内海は東播磨港。加古川市の海岸を取り囲むように、巨大な高炉がそびえ立つ「神戸製鋼所加古川製鉄所」。
年々増加する鉄鋼需要を背景に、この地に生まれたのは1964年のことだった。
68年に厚板工場が稼働して以来、鉄鋼一貫体制の神戸製鋼最大の一貫製鉄所として、鉄鋼生産の80%を担っている。
年間粗鋼生産量600万トンという「巨大鉄鋼都市」とでも言えるような加古川製鉄所を、取材班は訪れた。
加古川製鉄所の特色
KOBELCOの名で知られる神戸製鋼所は、かつて一時代を築いた鈴木商店神戸製鋼所として創立され、100年以上の歴史を持つ。中でも基幹工場である加古川製鉄所は、570万平方メートルという甲子園球場150個分の広さの中に高炉が3基立っており、その圧巻な姿は流石に、「鉄は国家なり」という言葉を、思い出させる。
敷地内には、専用軌道が縦横無尽に走り、強力なディーゼル機関車が、溶銑や鋼片、そして製品を、ゆっくりと、しかし確かな足取りで運んでいる。その情景から、銑鉄1トンを作り出すのに、鉄鉱石1.6トン、石炭0.5トン近くも使うといわれるように、まさに巨大なエネルギー消費型産業であることを肌で感じる。
東西3.5km、南北2.5kmの工場のレイアウトは、実に合理的にできている。東播磨港に囲まれた東岸壁から荷揚げされた原料の鉄鉱石、石炭が事前処理され、製鉄所のシンボルである高炉に流し込まれる。そこで溶かされた銑鉄を製鋼工場で鋼に変え、出て来た鋼片スラブを加工。こうして製銑・製鋼・圧延と行程順に流れてきたものが、加古川河口の西岸壁から製品として出荷される。
眠ることなく、稼働し続ける工場。
ここから、日本の、世界の工業へ向けた、鉄の長い旅がはじまる。
現代の最新鋭の工場
神鋼の特徴は、高炉メーカーでありながら、鉄鋼事業だけに依存せず、銅・アルミ・産業機械・エンジニアリングなどの割合が高い独自路線を貫いていることだ。こうした鉄をはじめとする各種金属素材から各種産業機械までを製造する神鋼の複合経営で培った技術を生かし、加古川製鉄所では、自社製作した原料整粒設備、ペレット製造設備、高炉、連続鋳造設備、酸素プラントなど多くの主要設備を稼働させ、品質の高い製品づくりを実現している。
さらに注目すべき点は、効率的な運用だ。エネルギー運用の中核である動力センターを製鉄所の中心に配置し、エネルギーの配給、変換、需給調整の機能を一元化した総合エネルギー需給システムを確立させた。
製造する品種は三つあり、薄板、厚板、線材。粗鋼生産量600万トンのおよそ半分が薄板製品となり、約3割が厚板で、残りの2割が線材となる。
薄板製品は熱延工程を経て、そのまま出荷される。黒皮製品と酸洗後に出荷される酸洗製品。さらに、冷間圧延後に焼鈍される冷延製品と鍍金して出荷される鍍金製品がある。
近代技術を集結した製鉄業だが、現場で働く人たちの存在は大きい。経験と勘に裏打ちされた、高炉の神様のような名工が様々な歴史をつくってきた。
時代とともに、コンピュータ化で管理されたシステムに取ってかわった現代、そこで活躍する熱い名工たちの哲学にふれてみたい。
第二話に続く・・・