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馬に捧げた人生物語 | 日本スターティング・システム株式会社 様

第3話

【馬に捧げた人生物語】日本スターティング・システム株式会社様

現在、JSSで製造している発馬機は、JRA日本中央競馬会の全競走で使用されており、
研究に次ぐ研究で、発馬機は6代目となった。1代目の8頭枠の48型発馬機が、初めて競馬場の芝を踏んだのは1975年のこと、
阪神競馬場の第2コーナーで牽引テストが行われた。油圧機構が初めて採り入れられたのも、この48型。アウトリガー、連結シリンダーが備わっていた。

終わり始まる—

発馬機の変遷

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「公正、そして安全なスタートを極める」
JSSのこの理念は、創業当時から守り続けている。

現在、JSSで製造している発馬機は、
JRA日本中央競馬会の全競走で使用されており、
研究に次ぐ研究で、発馬機は6代目となった。
1代目の8頭枠の48型発馬機が、初めて競馬場の芝を踏んだのは1975年のこと、
阪神競馬場の第2コーナーで牽引テストが行われた。
油圧機構が初めて採り入れられたのも、この48型。
アウトリガー、連結シリンダーが備わっていた。
その後、前扉のマグネットが装備されたが、
当初は、マグネットの吸着力が60㎏で、馬が鼻面を強く扉にぶつけると、
その衝撃でアマチュア版が開いてしまうというハプニングもあったという。

48型から60型、そして90型へとバージョンアップする際には、
色々な仕様の変更に着手した。
一番大きく変化したのは、色とデザイン。
ブルー1色から、3色のイメージカラーとなり、
扉の長さが長くなったり、
ステップの形状や、馬のためにプロテクター関係を進化させたのである。

製造は、60型時代から日本製鋼所に委託、
広島の工場でつくり、専用トレーラで各競馬場に運搬する。
中央競馬会で耐用年数が過ぎれば、廃棄処分になるのだが、
地方競馬や牧場関係者から要望があれば払下げる事もある。

では、どこが優れているのかーー。

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まず、第一に『軽さ』だ。
日本は、芝のレースが多いので、機械が重いと芝をいためてしまうからだ。
第二は軽量化なのに『頑強』。
第三は『油圧式』。
油圧を使っているので、自動車のパワステと同じように、
発馬機を牽引するトラクターのハンドルも指1本で切れる。

採用当時に、ニュージーランドから導入したウッド式ゲートは、
ものづくり大国・日本の技術者の腕で、
はるかに性能の高い製品へと生まれ変わったのであった。
その技術力の高さは海外からも評判となり、海を渡り、韓国にもおさめている。

バネが決めて!

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さて、発馬機の扉が開く仕組みについてだが、
ここでは、東海バネ工業のおさめているバネが、重要な役割をを果たしていた。

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「永久磁石を使用しています。馬は電気に弱いので、
常時、電源を入れていると、何かあったときに驚いて暴れるので、
一瞬電気を通した時点で、逆さがりといって、マグネットの磁力をゼロにします。
それをバネによって引っ張り扉をあける、
こういった仕組みになっています」(福田所長)

全部の前扉が同時に作動しなくてはいけない。
それは、バネの微調整で決まるという。

「枠内で馬が暴れて、
かけ金具がはずれて、扉が開きそうになることがあるのですが、
無理矢理、馬の力でグンとひくので、バネ自体が伸びきってしまいます。
そのとき、バネがもとに戻り100%の力が発揮できるかどうか、これがポイントです。
また、扉が開く際に、「ガチャン」と音がしますよね。
それがスタートの合図のようなものですが、音がしない研究もしています。
バネで引っ張って、
黒いゴムのような吸着盤にバーンと当たるようになっているのですが、
着く寸前にとめてしまおうかと。音がないほうが良いと言う人もいますし、
音が有るから出るんだと言う人もいますし、意見は様々です」 (福田所長)

こうして、練習用のゲートで様々な研究をしながら、改善につとめている。

馬のために、自分のためにがんばる
好きじゃなきゃ、できない

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JSSの現場スタッフは20名。それぞれが、4大競馬場違う分担で動いている。
トラクターで、ゲートを頭数によって、
つなげたり、撤去したりと、スタンドカーの運転もする
。一つの競馬場にスタッフが張り付き、
開催が終われば、すぐ次の競馬場に駆けつける。

水木金は関東・関西(トレセン)で朝の調教時間に、
発走、練習及び試験や枠入れ作業を行う。
午後からは、ゲートのメンテ、金曜日になると開催地へ向かう。
土日のレースをこなして戻ってくる。休む暇などない。

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馬をとりまく環境は厳しいものがあるが、
それでも、競走馬を世話する人たちの表情には、馬と同じような凛とした美しさがある。
きっと、馬をこよなく愛する思い、レースを支えている誇り、
そして、改革に情熱を注いできた先人たちの魂が、彼らを美しく、強くする。

夏の中央競馬場、ファンファーレが競馬場内に響き渡り、
最後のレースに、馬がスターティングゲートに入る。
この瞬間、JSSのスタッフたちは、安堵の胸をなでおろす。
『あとは、スタートするだけだ』

スターティングゲート、そこは、終わり始まるときーー

日本スターティング・システム株式会社

取材地:〒300-0415茨城県稲敷郡美浦村美駒2500-2
(美浦トレーニングセンター内)
TEL:(029)885-4504 / FAX:(029)885-4509

取材協力 関東事業所 所長 福田悦男 様