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世界のものづくり会社を支える小さな頭脳 | 株式会社松浦機械製作所 様

第2話

【世界のものづくり会社を支える小さな頭脳】株式会社松浦機械製作所様

時代は、5軸機の幕開けとなった。1991年、例外無くマツウラも、5軸機の製品化に着手していた。5軸のコンセプトは、多品種少量生産、長時間運転の無人化志向である。今でこそ、5軸機は当たり前に市場に出ているが、その頃は5軸の概念はなく、時期尚早だった。

徹底的にこだわる「機械は美人でなければならない」の精神

時代は、5軸機の幕開けとなった。
1991年、例外無くマツウラも、5軸機の製品化に着手していた。5軸のコンセプトは、多品種少量生産、長時間運転の無人化志向である。今でこそ、5軸機は当たり前に市場に出ているが、その頃は5軸の概念はなく、時期尚早だった。

「こんなもん売れるかい、どうやって売るんや!!」
営業からも評判が悪く、なかなか理解されない。価格も6000万円~7000万円と高額で、年に2台とか3台の出荷と、相変わらずの鳴かず飛ばずの日々が続いた。

それから約10年。
他にも、これといって目立った商品群は見あたらなかった。色々やってみたが、結局、5軸機をやろうということになった。これが第3の山である。
この業界には、日本のJIMTOF(ジムトフ)、アメリカのIMTS(シカゴショー)、ヨーロッパのEMO(エモ)と、3回の大きな工作機械展(展示会)があるのだが、毎回フェアに参加すると、ヨーロッパの動きなども見えてくる。そんななかで、密かに、5軸機の展示が増えてきたことを感じていた。そこで、91年につくったものをベースに、ラインアップを揃えてみたのである。
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こだわり抜いたコンパクト設計

マツウラのこだわりは「コンパクト設計」。コンパクトというのは、オペレータからみて、使いやすいということだ。たいがいの5軸機は、外の専門メーカーからユニットを買ってきて取り付けていたことから、ユーザービリティは悪かった。
「だから当社は、4軸、5軸のところは、自社で開発することからスタートしました。そうすると、当然、コンパクトになってくるんです」
多品種少量向けだけに、単体機での操作性を重視し、マルチパレットを取り付けることを基本とした。つまり、色々なバージョンが選べて、とりつけられるというものだ。技術的に難しいことはなく、アイディアの結晶だ。
こうして、開発に成功してから売れるまで10年を要したのである。

5軸複合マシニングセンタ

第4の山は、05年にCUBLEXを出したことだ。これは、開発の歴史のなかでも大きなエポックメーキングである。5軸制御マシニングセンタに切削・研削機能を付加したからだ。
もともと、旋盤から派生したマシニング加工ができる機械はすでに他メーカーから出ていた。そこで、マシニングセンタをベースとして「高剛性」で勝負をかけ、回転テーブルを高速化することで,世間をあっと言わせたのである。
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さらに、全く新しい概念の金型製造システムにも取り組んでいた。
「02年、プロトタイプで金型づくりを研究されていたパナソニック電工株式会社様から、当社に機械をつくってほしい、と話が舞い込んできました。
現在の会長は、『レーザをやりたい』と口癖のように言っていましたから、国の補助金制度を活用し、コンソーシアムで新しい技術開発に取り組んだのです。最終の形ができたのは2006年。これは3台目。正確には3世代目ですね」(近藤取締役)
この機械は、大きな手応えを掴んだ。
ある展示会では押すな押すなの人だかりで、3000部用意したカタログがあっという間に無くなってしまうという反響ぶりだった。
高速のマシニングがベースで、そこに新しくレーザを融合させているのは、画期的なアイディアだった。こうして第5の山を乗り越え成功したLUMEX Avance-25は、未だに、追随する商品はでてきていない。
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世の中にないものをつくろうといっても、膨大な資金力がなければ、一から研究というのは至難の業だ。それよりも、あるものをどう工夫して、別のかたちにするか、ということをマツウラの開発者たちは常に考えている。
それが、アイディアだ。

まさに、マツウラはアイディアの宝庫なのだが、その文化は「なんでも挑戦しろ!」という創業者精神からきている。失敗を恐れることなく、エンジニアたちは好きな研究をやり続けてきた。根っからの職人で機械が好きだった創業者は、エンジニアたちのために次から次へと新しい機械を購入。プロコン、マシニングセンタ・・・・周りからは「気でも狂ったのか!」といわれるほど、儲けのほとんどを、設備投資につぎ込んだ。その投資のおかげで、マツウラはこれまで多くの、「国産初」という製品を生み出してきた。
立形マシニングセンタ、高速スピンドル、etc・・・
立形には、こんな笑い話がある。
「マシニングセンターの定義というのは横形でしたから、立形は定義に入らなかったのです。立形のマシニングセンタを出したとき、「これはマシニングセンタではない。フライス盤だ」というクレームがきたと聞いています。それでも、これは立形マシニングセンタだと、言い通したそうです」(天谷取締役)
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記録をつくった真っ赤な機械

「81年頃だったか、MC-500Vという立形の小さい機械があったのですが、ガードの色が真っ赤でした。展示会で当時のお客さんは『赤い機械を目指してきた』、というエピソードがあるんですが、実はムーブ社に対抗してつくったんです。マツウラのカラーでもありましたが。その機械は月50台くらい出まして、一番売れた機械なんです」と、近藤取締役は微笑んで語る。

グレー、グリーンが当たり前だった機械の色。作業服もグレー。そんな地味なイメージの工場の常識を片端から変えていったマツウラは、機械のデザインも、意識した。

見た目は大事である。ここ数年、デザインに力入れていることで、最初のころから随分と様変わりしている。
「最初は、なかみを積み上げてから、最後に形をきめていたのですが、現在は、その逆でつくっています。ドアのハンドル一つも、こだわって決めています。お陰様で、ヨーロッパの代理店でも、日本での高い評価をいただています」(三浦GM)

天谷取締役が、創業者が言っていたことで、今でも忘れられないことばがあるという。
それは、『機械は美人でなければならない』という言葉だ。
美しい機械とは、無駄がないということ。余計なものをそぎ落とし、こだわって、こだわって、機能美を追求する。それが優れた機械の証である。

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(第3話「成功の影にパートナーあり」に続く・・・)

株式会社 松浦機械製作所

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所在地:〒910-8530 福井県福井市漆原町1-1
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取材協力 株式会社 松浦機械製作所
取締役品質本部長 近藤好治様
取締役技術本部長 天谷浩一様
営業本部 海外営業 ゼネラルマネジャー 三浦一男様
技術本部 開発研究マネージャー 横井信一様