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世界初ゴムクローラーを生み出しだ会社 | 株式会社諸岡 様

第1話

【世界初ゴムクローラーを生み出しだ会社】株式会社諸岡様 

子供の頃、男の子のおもちゃ箱に必ずあったものといえば、自動車、電車、ブルドーザーやパワーショベル。気に入った玩具を手に、家のなかが駅になったり、工事現場になったりして、電車やブルドーザーを思いのままに走らせたことだろう。どんなところでも駆け上っていく走破能力、そんな無限軌道への夢は、永遠の少年のロマンである。そんな機能美を追求して、世界的な発明をした会社がある。

<先駆>一歩先を行くための試行錯誤

子供の頃、男の子のおもちゃ箱に必ずあったものといえば、
自動車、電車、ブルドーザーやパワーショベル。
気に入った玩具を手に、家のなかが駅になったり、
工事現場になったりして、
電車やブルドーザーを思いのままに走らせたことだろう。
どんなところでも駆け上っていく走破能力、
そんな無限軌道への夢は、永遠の少年のロマンである。

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さらに突き詰めると、少年の心を持った男たちが好きな形とは機能美。
レーシングカーが美しく思えるのは、走りに徹しているから、
建設機械が美しく思えるのは、建設の機能に特化しているから。
必然の美学だからこそ、人は感動する。

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そんな機能美を追求して、世界的な発明をした会社がある。
茨城県にある諸岡という会社だ。
何を生み出したかというと、ゴムクローラー。
広く続く平原に、真っ青な空。
そこに並べられている黄色い車体のゴムクローラーの光景は、
さながら、夢のおもちゃ箱をひっくりかえしたような工場である。

今回は、そんなゴムクローラーを開発した諸岡を紹介する。

ぐちゃぐちゃした不整地を走行したい!

1958年に茨城県で創業した諸岡の出発点は、井戸掘り業からだった。
地下水をくみ上げるポンプ屋で、家庭用、工業用の井戸掘り業を手がけていた。
辺り一帯は地盤が悪く、水道管などの運搬には随分と苦労した。
担いでいくしかなかった当時、ブルドーザーの後ろにソリのようなものを取り付け、
その上に材料をのせて引っ張るといった毎日だった。
「何とかうまく運ぶ方法はないものか」
と頭を抱えていた一方で、農業用のコンバインが、
田んぼのぬかるみに、どんどん入っていけるようにならないものか、という相談も受けていた。

「キャタピラがゴムだったらどうだろう」

こんな画期的なアイディアを思いついたのは創業者の諸岡会長。
「ならば自分で拵えてみよう」と、つくった記念すべき第1号機は、
小さな農業用のコンバインだった。1960年代頃の話である。
70年頃になると、「もっと大きいものをつくれないだろうか」と、
諸岡会長は大規模な商品化に挑戦。
ブリジストンさんに相談し共同制作で、ゴムクローラーの原型ができあがった。

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「このゴムクローラーの発明とは世界的な発明となったのですが、
キャタピラ社といえばだれでも想像がつくでしょう。
元来、キャタピラといえば鉄でした。
アメリカのキャタピラは世界一の建機メーカーですが、
その鉄のキャタピラは、重く、曲がりにくく、
また隙間ができてしまうため地盤に潜りやすいという難点がありました。
そのことを解決するために、鉄に代わるものを探したら、
ゴムにいきついたのです。鉄に比べてゴムは軽い。
当然、強度を高めるためゴムの中にはピアノ線が入っていますが、
ゴムは自由自在に曲がり、切れ目がないのです」

こう説明してくれるのは、創業者から経営を引き継いだ諸岡正美社長である。
子供のころ、まさにこのおもちゃ箱で遊んでいた人物である。

男のロマン「無限軌道」とは?

クローラーを無限軌道と呼ぶのだが、ちょっと具体的に説明しよう。

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工事現場や農地、砂漠などの不整地や雪上で、
通常の車両が走行しようとすると、凹凸に阻まれたり重量で地面にめり込んだりしてしまう。
これに対して無限軌道は、車輌の重量が履帯全体にかかるため、
接地面積辺りの圧力が小さくなり、柔らかい地面や雪上でも沈みにくくなる。
また多少の起伏や穴なども履帯越しに転輪が通るためにスムーズな走行が可能。
さらに、この機械はその場で回れる。その場旋回といって、ある部分で片方が前進して、片方がバックするという理屈だ。
これが、クローラーの大きな利点だった。
そのクローラーは、きれいな舗装道路ではなく、
ぐじゃぐじゃした地の悪いところを走行するため、
ああいう形になっているのだが、
実は、そこで重要な役割を果たすのが、「バネ」なのである。

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クローラーの内側に異物が挟まると、
クローラー自身は伸びないため、ロックしてしまったり、外れたりする。
そうならないよう伸びたり縮んだりするために、バネが活躍している。
バネは最初、ある程度余裕を持って装着する。
セットしてからギュッと縮めて、遊びがない程度の圧力を掛けて装着するのである。

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「異物が挟まった時には遊動輪が内側に縮むというように、
バネはパイプの中で活躍しており、そのバネの収縮によって、クローラーそのものを維持、守っているのです。
特に、普通のクローラーで使用されている鉄は強いですから、
ちょっとやそっとのことじゃ切れることはありえませんが、
ゴムは鉄よりは弱い。ですからバネがない状態で異物が入ってきたりすると、
すぐブツって切れちゃうわけです。伸びの余裕がないですから。
バネはひとつのクッション材みたいな役割をするんです」

バネにある程度の遊びを残しておくのが大事だが、
強すぎても弱すぎてもだめ。
この調整が一番難しいのだが、このバネがゴムローラーを守るため、余分な力を全て逃がしてくれるのである。

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「ゴムクローラーは、
鉄のクローラー(キャタピラ)とタイヤの中間で、それぞれの良いとこ取りなんです。
鉄のキャタピラだったら、重くてスピードが出ないが、
タイヤなら出せるんです。
その両方をとったゴムクローラーは、
ほどほどスリップせずに、ほどほどのスピードが出る。
防衛省に出している諸岡の機械は、20キロまで出ます」

ゴムクローラーに要求されるのは、機動性だ。
ある程度、荷物を積んで、条件の悪いところを走行できる。
狭いところも、縦横無尽にどこでも走れる。
ある部分で片方が前進して、片方がバックしてその場で回れる。
その機動性が一番求められる。

こうして、世界初の発明となったゴムクローラーを武器に、
諸岡は急成長することになる。

第2話に続く・・・・。

―環境と共に生きる―

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取材協力 代表取締役 諸岡 正美様