第3話
【大阪から生まれた技術が世界にわたる】株式会社中北製作所様
「総合流体制御システムメーカーの実力」
ここでは、ハードからソフトまでを提供する中北の発想に注目する。創業者精神がしっかり伝授されている経営スタイルは、77年経った今でも、かわることはない。
バルブ屋では終わらない!
「総合流体制御システムメーカーの実力」
ここでは、ハードからソフトまでを提供する中北の発想に注目する。創業者精神がしっかり伝授されている経営スタイルは、77年経った今でも、かわることはない。
「バルブ屋で終わるな、バルブに付随するものまでやってしまおう!」
創業者、辨造の口癖であった。
その精神を受け継ぐ中北では、バタフライバルブの成功に続く、次の展開を考えていた。
元来、バルブはバルブメーカー、これを動かすアクチュエーターという駆動部メーカー、信号をバルブに伝える計器関係は計器メーカー、
バルブを遠隔操作する遠隔操作機器メーカーと、複数の会社が介入しているケースが多い。
そうした分業制度が成り立っている業界のなかで、バルブからシステム、つまり、ハードからソフトまでをトータルに提供する中北になろうと取り組んだのである。
顧客にとっても、バルブメーカーや、計器メーカーなどと分かれているより、1カ所に集約し、安心して任せられるところがあれば効率的だ。
そうしたことを背景に、船内のバルブを1カ所で遠隔操作する「バルブリモコン」の開発や計器関係、アクチュエーターの製造に着手し、
製品化に成功していったのである。
現在、舶用向け売上が80%、陸用が20%だ。その船の中でも特に油を運ぶタンカーの船には、バルブとシステムがたくさん使用されていることから、
一隻あたりの単価は高い。そのタンカーの部門では、ほぼ100%近いシェアを持っている。
バルブと遠隔装置、周辺機器を製造するメーカーは世界でも数少ない。
永きにわたり品質経営を維持した結果、世界の船主、造船所から圧倒的な支持を得ることなった。
これが中北の強みだ。
「日本の造船各社にご採用いただいて成長してきましたので、軸足は日本に置いております。その一方で、韓国、中国といった海外にも目を向けています。
韓国では造船業がスタートした頃から参入しています」(信龍専務)
韓国、中国、日本、ここがほとんどの造船業界を占めている。
なかでも、造船業は今や韓国がメイン。韓国を100とすると、中国は約60を建造するまでに急成長している。
そんなマーケット環境のなか、国内ではバルブとその遠隔装置で約95%、韓国ではタンカー用マーケットの約65%、
中国でも同じくタンカー用マーケットの約50%のシェアを持っている。
また近年では新たな製品ライナップとして、05年に陸用ガスタービン用燃料制御弁の
IS型高応答アクチュエーターを開発に成功、引続き次ステップとして耐圧防爆型を現在開発中である。
さらに、06年には、LNG船のカーゴラインに使用される超低温バタフライバルブを株式会社ササクラとの業務提携により開発。
船舶向けに「ナカキタ・ササクラ」ブランドが登場した。
電算システムの導入
こうして次から次へと先手必勝で最前線を走ってきた中北は、1985年に電算システムの導入を行った。
設計、営業、生産管理等の紙に残してある情報、頭のなかの情報をすべて吐き出し、一つのコンピュータに詰め込んだ。
それが「NAPS(Nakakita Production System」だ。
「一品一様のオーダーメイドのシムテムでお客様の仕様を相談して作ります。例えばAのバルブに製造番号を振り当てます。
その製造番号を追うと、どの仕様で作ったのか、何年にどの造船所の何番船に搭載されたか等詳細な情報が網羅されています。
例えば、船上からバルブのトラブルがあった場合、製造番号を伝えてもらえれば、
全ての仕様が我々の電算システムに出てくる仕組みです。
これによって、メンテナンス業務の効率もアップしました。
船の寿命とは25~30年なのです。その間に不具合が生じれば、アフターサービスの仕事がありますので、
そのレコードをのこしていくということです」
2008年にはこのNAPSをバージョンアップさせた新NAPSを稼働、100%オーダーメイド生産の受注品を製造番号単位で管理し、
「短納期化、仕掛在庫3億円削減、生産効率30%アップ」を目論んでいる。
新NAPSに入っている部品は、約10万点。恐るべき数である。
その一つ一つに、打ち込まれている細かい情報が、中北の歴史と実績である。
様々な技術革新、想像できないような大変革が、押し寄せてきたとしても、誰もこの壁を越えることはできないだろう。
創業者の辨造が会社を起こして77年。
開拓精神で築き上げてきたフロンティア・スピリットは、4代目の中北健一社長にしっかり受け継がれている。
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