ばね探訪 - 東海バネのばね達が活躍するモノづくりの現場をレポート

ばね探訪レポート

一覧へ

あんなこんなニュース

東海バネ工業株式会社

126年の鉄路 伝統を受け継ぐ12人のSL組 | 東日本旅客鉄道株式会社 大宮総合車両センター 様

第1話

126年の鉄路 伝統を受け継ぐ12人のSL組

24-1-330-2

1891年、上野と青森間の路線を開業したJRの祖先、日本鉄道。
これを機に、路線拡張は飛躍的に伸びていった。
その3年後、蒸気機関車や車両を支える「大宮工場」が設立され
戦前の鉄道省、戦後の国鉄を経て、民営化後「大宮総合車両センター」へと改称。
連綿と続く「鉄道の街-大宮」のシンボルとして、世紀を超えて存在している。
先人たちが築いてきた知恵や技を受け継ぐのは、
126年の鉄路を守り続ける12人のSL組。
偉大な師匠たちの背中を追い続け、
日々研鑽する2人の若者の「葛藤」と「前進」を追った。

24-1-330-2

24-1-330-3

ばらばらになった鉄塊

工場の一部に整然と並ぶ、解体された鉄の塊。数年ぶりに大宮総合車両センター(以下大宮)に戻ってきた蒸気機関車(以下SL)の姿である。年齢でいえば、還暦をとうに過ぎているだろうか。疲れた身体を休ませ、静かに眠っているかのようにも見える。その老体を丁寧に診察し、もとの状態に復元するのがSL組。ここ、大宮では受託業務を含めて本線で運転されるSLの命を、僅か12名のメンバーが繋いでいる。

一番の長老は1933年製のC12、2021年に米寿の祝いを迎える。しっかりメンテナンスをすれば、半永久的に走り続けることができるという。そんなSLたちは、3年に一度のペースで大宮に舞い戻って来る。中間検査、全般検査など約5ヶ月間、羽を休めるのだが、ここではどんな検査が行われているのだろうか。

SLは、ほとんどの機能部品が分解され、完全にばらされた状態で工場内に横たわる。
整備はオリジナルにこだわるだけではなく、例えば給水装置などは後のメンテナンス性を考え、高性能なものに交換する。

24-1-330-4

それでも部品に困る時は、色々な場所に保存されていたり、無償譲渡している車両から部品を取り外して再利用。古くてもいいものはなるべく使うが、必要に応じて新しいものも調達する。給油する油脂類も、粘度が高いものを使うことで、発熱を抑える効果を生んでいる。走り、生き抜くために。

人間も年をとると、色々な場所にトラブルが起こる。特に足腰の弱りが顕著になると、一気に老衰する。SLも、足腰のチェックは重要事項だ。足腰が弱れば、人間同様老け込んでしまうものだから。

24-1-330-5

それが動輪の減り。長い年月を走行していると、直接レールに触れている動力源、接触部分は、摩擦による摩耗が生じてくる。車でいえば、タイヤのトレッド摩耗のようなもので、SLの動輪や車軸は、削り直しで形状を慣らす。SL独特の動きを象徴する、動輪に繋がる「連結棒」の摺動部でも摩耗検査は重要。走行するたびに減るものだから、常に目を光らせなければならない。

ばねに関しても同じ。いまではコイルばねが主流だが、SLや昭和30年代までの電気機関車、貨車などに使用されていたのは板ばねだった。経年使用で徐々にヘタリが出てしまう。だから、性能検査やキズのチェックを徹底する。古い車両からの移植が可能であれば利用するが、使用限界を超えてしまうと、新たにつくることも視野に入れなければならない。

「守るべきものを守り、変えるべきものを変える」これが、長寿の秘訣である。

整備士に憧れて

そんな大宮に、少年のころから電車の修理を夢見ていた若者が入ってきたのは2007年の春。物心つかないうちから親に連れられ、年に一度の大宮工場公開日を訪れるのが楽しみだったという渡邊功さん。念願叶って、電車の整備士となった。

24-1-330-6

ある日、後の上司となるSL組の中島賢樹班長に、SLを見せてもらう。「大宮にもSLがあるのか。やってみたい」。そう、興味をもちはじめた渡邊さんは、C61復元工事のときに、技術科SL組に異動した。入社2年目の頃。しかし、それは苦難の道の始まりでもあった。

24-1-330-7

一体、何から始めたらいいのか・・・もの言わぬ鉄の塊を前に、渡邊さんは途方に暮れる。部品の名前、外す手順、工具の使い方、ネジの呼び名すら、それまで経験した電車とはまるで違う。折角、覚えてきた技術とは、何もかもがかけ離れていた。

 

第二話に続く・・・

~126年の鉄路 伝統を受け継ぐ12人のSL組~

東日本旅客鉄道株式会社 大宮総合車両センター

 

取材ご協力

大宮総合車両センター SL組
山口憲三様
中島賢樹様
渡邊功様
我妻翼様

取材

東海バネ工業 ばね探訪編集部(文/EP 松井  写真/EP 小川)