第2話
第2話 学び合う文化が若手社員を育てる
販社強化の改革をスタートさせて十数年。見事に経営構造を変えることに成功したウチダシステムズは、ぶれない軸を持って柔軟に変化し、進化してきた。理念やミッションの軸を持ちながら、その実現のための手段は、外部環境の変化に合わせて変化し、会社は進化し続けてきたのである。
その成長を可能にしたのは、第1話で紹介した需要創造訓練など独自の仕組みづくりで生まれた「学習とチャレンジの文化」があったから。新しいことを学び、柔軟に取り入れ、社員同士で学び合うことで、変化を恐れない進化の組織文化がつくりあげられた。こうした環境は、社員へどのような影響を与えているのだろうか。
* 需要創造とは:お客様の課題を引き出し、本当にやるべきことを創出するトレーニング。
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法人第一営業部 課長
小西 俊夫 さん
多様性に目を向ける
ウチダシステムズのコーポレートメッセージは、「場づくりを通じて成果向上と組織文化の発展に貢献し、働く、学ぶ、生きるを楽しく豊かにする!」というもの。この想いのもと、「オフィス」「学校」「福祉施設」の3つの市場で事業を展開している。特筆すべきは、この多様化した事業部が融合して訓練をするところだ。様々な活動のリーダーを担う小西俊夫課長(法人第一営業部)は、次のように効果を語る。
「色んな文化をもつ人が一つの場で働くようになった時代ですから、学校の職員室や、福祉施設における働く場の考え方をオフィスに取り入れるなど、異なる視点を融合させています。訓練では議論が飛び交い、色んな角度から意見をもらえますし、お客様への提案のヒントや手掛かりがあります。3つの市場での場づくりが、良い方向にいっていると思います」
そんな小西課長は、30歳を過ぎた頃に商社の営業から転職してきた。それだけに、ウチダシステムズのこうしたスタイルに溶け込むことができない時代があった。
「私が入社した頃は、会社が変わろうとしていた時期でした。それなのに、自分が一番それに馴染めなかったように思います。訓練を重ねていくなかで、『営業って需要創造なんだ!』ということにようやく気づくのですが、そこに辿り着くまで2、3年はかかりました。10年近く、物を売る営業をやってきていたので、『売る』から『聞き出す』というギアチェンジは、本当に大変でした」
岩田社長が生み出した、お客様の理念やビジョンから課題を聞き出し、「何をするべきか」を実現するための支援という営業スタイルは、課題解決を超えた「未来のありたい姿」の実現支援ともいえる。
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法人第二営業部
森戸 亜耶佳 さん
社内最大イベントを任される
何年もかけて積み上げられてきたこの独自のメカニズムは、社員成長の源泉となり、いたるところから湧き出ている。取材当日、オフィスツアーの案内役となってくれた森戸亜耶佳さん(法人第二営業部)は、社内の最大イベントであるウチダシステムズフェア(USSフェア)のプロジェクトリーダーを26歳という最年少で任された。
「ウチダシステムズの良さは『人』だと思います。困っている人を見ると、ほっとけないんです。若い社員が難しい顔をしていると「何やってるの?」と会話が始まります。年次の浅い私が、USSフェアのリーダー任命を受けた時も、期待とプレッシャーで押しつぶされそうになりましたが、3名の課長勢が支えてくれました。若手を引き立たせ、自発的に動ける環境をつくりながらも、影で手助けしてくれるバックアップ体制があります。だからこそ私たち若手は、安心して表舞台に立てるのです。こうした文化に共感した人たちが残り、また集まってくる。組織文化がいい循環を生み出していると思います」(森戸さん)
お客様の変化
入社3年ほどで先輩社員と対等に会話ができ、お客様とのミーティングでも率先してファシリテーターをつとめるというウチダシステムズの若手社員。数々の実績を残す森戸さんは、提案から完成まで、お客様の思考の変化を体験している。
「青果業界のあるお客様から、老朽化したオフィスのリニューアルのご相談を受けた時のことですが、そう何度もない会社のリニューアルなので、『この大切な機会を、もっと御社のステップアップのチャンスにしませんか?』というご提案をさせてもらったのです。そのことにとても共感していただきました。
自分たちの働き方の問題点をワークショップ形式で進めていったのですが、自分の仕事内容を他の人が把握していないことから仕事を休めないなど、私どもで解決できな
い内容もあげていただき、どんな不満があるのか、どういうオフィスだと活躍できるのか、これを数十名の社員の皆さんと1から考えていきました。
当初は、『オフィスは与えられているもの』と認識されていましたが、プロジェクトが進むにつれ『自分たちの意見で変えていけるもの』と変化していきました。そうなると、一人一人が主人公になれるプロジェクトとして認識してもらえるようになり、どんどん意見、アイデアが活発になったのです。青果業界のお客様にとって、主役は青果市場なのですが、そうではないエリアでも見学に来られるようなオフィスになり、業界紙にも取り上げられたり。まさに、裏方の人たちも輝ける場所づくりができたと思っています」(森戸さん)
価値を伝え続けて
一方、伝統的な会社のお客様を担当する小西課長は、伝えたい人に、どう価値を伝えるか、ということの難しさに苦しんだ経験を持つ。
「私が担当していたなかで、歴史の長い大規模な会社のお客様がいらっしゃいました。とても難しかったのは、我々がご提供したい価値が、なかなか響かなかったことです。ご提案したい層へのアプローチ、新しいことを取り入れていただくことへのご理解など、長い時間をかけて、少しづつ、少しづつ、我々のスタイルをお伝えしつつ続けました。それがようやく花開いて、今、本社のフロアの大改修をさせていただいています。
お客様の立場に立ち、本当にやるべきことを創出する支援は、しかるべき立場の方に価値をお伝えして理解をいただかないと、スタートすることができません。しかし、総務のご担当者は、オフィス家具の補充を目的にご依頼をいただくわけですから、企業力向上のオフィスづくりをご提案しても、当然、思いは一致しません。決裁権のある上司にその話を持っていくにしても、ご担当者様に余計なお手間を取らせることになるわけです。そこが難しいのですが、今回、ご担当者様がその価値を理解してくださったからこそ、大改修が実現しました」(小西課長)
法人営業を成功させるためには、どんな分野でもキーマンにたどり着くことが重要なハードル。どうやってその層まで思い伝えることができるかどうかが、大きな鍵を握っている。
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ウチダシステムズ
岩田 正晴社長
おもろいか、おもろくないか
オフィスづくりが完成したら、そこからがスタート。どんな風に、人もレベルアップされていくのか、完成後に色んな反応が見えてくる。それを共有し、さらに改善していく。
「みんな、おもしろおかしくやってるか?仕事だから、おもろうやろうよ。うちの良さはノリ。ノリが悪かったら、うちではないよ」
ときに、そんな言葉を社員にかける岩田正晴社長。「判断基準は、おもろいか、おもろくないか」という、関西出身者らしい表現である。ノリとは音楽でいうならば、グルーヴ。一体感をもって熱量を高めながら共に仕事をするためには、阿吽の呼吸のような「ノリ」が大事で、何かを創りあげるには、必要不可欠。そのグルーヴ感があるかどうか、岩田社長は敏感に察知している。
「我々は場づくりをやっていますが、場の提供が仕事ではありません。生産性とかコストの最適化とか、お客様の成果に繋がる目的が必ずあり、そこに貢献するための場づくりです。人が働く・学ぶ・生きる・楽しく豊かになる。これを通じて、自らの成果向上と、組織文化を発展させていきたい」(岩田社長)
理念は「進化と貢献」。これは、ウチダシステムズとなってから、「我々はもっと“ シンカ”しなければいけない」と社員の中からできてきた言葉だという。その「シンカ」とは、進化・真価・深化と、様々な意味を含む。
これから、会社を引っ張っていく中心はミドルたち。全国から次課長を集めてミドルアップ答申委員会をつくり「未来会議」を立ち上げた。その委員会のリーダーが小西課長。「未来、自分はどうありたいか」を発表し、中期経営計画にも反映させている。DX をはじめ、様々なサービスが乱立している時代のなかで、手まひまかけて、個々のお客様に合わせた唯一無二の場をつくっていることに自負を持たなければならない。人間が知恵を出せば出すほど、お客様の価値につながる。そこに、貢献し続けたいと、岩田社長は語る。
~オフィス、それは理念を実現する場~
株式会社ウチダシステムズ
取材ご協力
代表取締役社長 岩田 正晴様
法人第一営業部 課長 小西 俊夫様
法人第二営業部 森戸 亜耶佳様
取材
東海バネ工業 ばね探訪編集部(文/EP 松井 写真/EP 小川 )