第2話
【モノづくりの遺伝子―歯車減速機からエコへの道―】阪神動力機械株式会社様
みなさんは、スーパーマーケットでアスパラを目にしたことがあるだろう。そのアスパラは、紫色のテープラベルにまかれていたはずだ。何気なく見ている光景、そこにまかれたテープラベルは、出荷の時に、生産者が手でまいているのかと思いきや、実は自動化されている。そのアスパラ自動結束機を開発したのが、阪神動力機械。 そう、ここには精密な機械が介在している・・・。
積極思考のチャレンジ精神
公共から、産業用へ
みなさんは、スーパーマーケットでアスパラを目にしたことがあるだろう。
そのアスパラは、紫色のテープラベルにまかれていたはずだ。
何気なく見ている光景、そこにまかれたテープラベルは、出荷の時に、生産者が手でまいているのかと思いきや、実は自動化されている。
そのアスパラ自動結束機を開発したのが、阪神動力機械。
そう、ここには精密な機械が介在している・・・。
減速機からアスパラ、精緻なメカニズムと農産物。
まるで正反対に位置するもののように思えるかもしれないが、実はこのアスパラ結束機も、これまでのテーマに深くつながっていた。
「出荷時にアスパラ数本をこの機械に入れますと、
下を揃えて、アスパラを傷まないように掴んで、クルリと回ってくる間に、
テープを巻いてくれるものなんです。
本来はとても手間のかかる仕事だったんです」
単純にも思えるが、作物を傷めずにまく、という動作が機械には難しい。
しかし、こと回転に関しては多くの蓄積を持っている阪神動力機械だけに、
こうした産業用設備機器にも、長年のノウハウがいかんなく発揮された。
農作物に関連した機械としては、米自動袋詰め機もラインナップされている。
「米自動袋詰め機は、その名の通り、お米に関係する機械です。
自動的にお米を袋に入れるのは簡単ですが、
その後、袋の口を結んだり、縫ったり、テープを貼ったりと、
とても複雑なことを簡単に行うことができる機械なんです。
これも面白い動きをするんですよ」
また、回転を端的に表しているのが、ステータ・レーシングマシーンだ。
「阪神ブランドとして一番有名になったのが、ステータ・レーシングマシーンかもしれません。
モーターというものは、S極とN極の回転を繰り返すことで鉄芯を回すものです。
そのまわりに、銅線をグルグル巻いているコイルがありますよね、
あれがステータなんです。
そのコイリングされる銅線のエンドを糸で縛る機械がステータ・レーシングマシーンなんです。
縛るというより、縫っているんですね、針と糸で縫うわけです」
ステータ自体も回転を伴う機械であり、その回転には高い精度が要求される。
その中にあって、回転バランスの誤差を最小限のものとするステータ・レーシングマシーンは、
絶大な信用を得たのである。
大事なことは発想の転
こうして、
歯車減速機、水処理設備用機器といった公共から、
とても複雑な動きが要求される産業用関連の機械へと技術は反映されていったのだが、
その開発は決して平坦なものではなかった。
失敗と挑戦の繰り返しの中で、開発を成功させることができたのは、積極思考のチャレンジ精神があったからだ。
そのことを象徴させるものとして、過去に、独自で生み出したアイディアで、
世間をあっと言わせたことがある。それは、水門扉屈曲式ラック開閉機の<バウラック>。
当時、水門をあげたり下げたりしていた開閉機は、まっすぐな棒でできていたため、建屋のなかに収まらず、水門をあげると操作室に突起していた。
「景観も悪いし、建屋のなかにおさまらへんかなー」
そこで考えたのが、ラック棒を屈曲させること。
必要なときにでてくるというものだった。
まるで、子どもの頃にあった、竹でできた蛇のオモチャのように、硬いものが、クネクネと曲がる仕組みだ。
聞けば非常に単純なことと思えるのだが、当時は誰も考えつかなかった。
特許を取得し販売すると、大評判。
この屈曲ラック式は水門自体の設計自由度を大きくする効果もあり、一気に広がったのである。
まさに、発想の転換だった。
このように、積極思考のチャレンジ精神が、阪神動力機械にはしっかりと根付いているのだ。
エコへの挑戦
そんななか、「こんなもんできへんかな」と、ある市場からリクエストが舞い込んできた。
それは、出荷される際に廃棄される食品に困っている・・・・とのことだった。
当時、家庭用のコンパクトな土壌改良機は多く存在していたが、産業的な規模はあまりなかった。それまでは、炭化するのが主流で、阪神動力機械でも開発を進めていたが、うまくいかない。
多くの試作機を作ったものの、製品としては日の目を見ることはなかった。
難しい課題は、安全面と常に安定してできるかどうか。
連続して炭がでてきたとしても、炭にしたモノを廃棄する場所がなかった・・・。
そこで、思いついたのが、肥料にしてまいてもらうこと。
これも発想の転換、リユースという考え方そのもの。
早速、試行錯誤で開発に取り組み、完成したものがだ。
「このマシンには、バイオパーフェクショナイズという名前がついています。食品残渣などをバイオ菌で減容化する、つまりバイオ菌が食品残渣を食べるのです。 当初は100の廃棄物を、10くらいにして廃棄しようとはじめたので、なかなかうまくいきませんでしたが、それを肥料として再利用することに着目したことから、30~40の減容化で十分となったわけです」
農家がつくった野菜を選別し市場に持っていく、その時に出るくずをバイオパーフェクショナイズに放り込む。減容化され、なおかつ、それが肥料になって、また農家に戻ってくる、というサイクル、リユースを考えた商品というわけだ。
しかし、まだまだ満足はしていない。
基本技術は完成しているが、あとはいかに各種性能をブラッシュアップさせるかだ。
そのポイントは、いやな臭いを除去すること。
消臭するためには電力が必要で、その電力量をいかに減らしてイニシャルコストを下げるか、
という技術的課題が今、与えられている。
和歌山の出荷できない「みかん」の処理や、スイカ、キウイの処理など、市場は大きい。
阪神動力機械では、そのターゲットとして、JAを対象にしている。
「菌は菌専門の会社から提供してもらい、その菌が生きていける環境を我々がつくっているわけですが、1トン~2トンの廃棄物が入り、その30~40%が肥料となり、リユースされます。
細菌の世界の技術開発力はずごいですね。
そうした基本的な技術をベースに、我々も開発していかなければなりません。
バランス良く、安定した開発能力が求められているんですね。」
また、公共用機械と産業用機械とは、考え方の違う部分がかなりある。
「公共向けは、最初からスペックがきっちり決まっていて、精度を合わせ込むことで成立しますが、産業用は、用途や納入場所に応じて、その都度違うスペックを要求されます。
しかし、機械自体を大きくカスタマイズしますと、莫大なコストがかかってしまいます。
ですから、安定したスペックを持つ機械を提供し、
使用する方々が、機械に合わせていただくという方法をとっています。
そのあたりが、難しさですね。」
「技術開発は、メーカーの宿命です」と語る中村工場長。
その技術力に根ざした根底には、「積極思考のチャレンジ精神」が血液やオイルと同じように、脈々と流れている。
・・・・第三話に続く。
~「機械づくり」で人と環境に貢献します。~
阪神動力株式会社 氷上工場
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住所:〒669-3571 兵庫県丹波市氷上町新郷1383
℡:0795-82-3422!
取材協力:製造部 取締役工場長 中村智之様 / 生産管理課主任 倉地徹麿様