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東海バネ工業株式会社

自転車からスタートして、自動車、エスカレーター、あらゆる”動く”を支えて92年 | 株式会社ツバキエマソン 様

第2話

【ツバキエマソン誕生】株式会社ツバキエマソン様

わずか1年前には予想もできなかった”不況の波”で、現在、日本企業の景気地図は大きく塗り替えられようとしている。まさに、一寸先は・・・・の不確実性の時代を物語っているが、多少の影響はあるものの、ツバキエマソンはビクともしない。それは、福井取締役のある思いからはじまった大改革が、成果を得たからである。

機械を止めろ!!壮大な実験工場の舞台裏

目指せ、短納期!

わずか1年前には予想もできなかった”不況の波”で、現在、日本企業の景気地図は大きく塗り替えられようとしている。まさに、一寸先は・・・・の不確実性の時代を物語っているが、多少の影響はあるものの、ツバキエマソンはビクともしない。
それは、福井取締役のある思いからはじまった大改革が、成果を得たからである。

その大改革とは、壮大なテーマの実験工場だった。

40年前から手がけている開発で、ボールねじという製品がある。最初は外から買っていたが、なかでつくりはじめるようになった。
「新しい商品をつくろう。全然仕様の異なる、もっと高性能なものを目指そう」

ツバキエマソンの開発チームは、設計技術、生産技術と大きく二つに別れている。
当然チームで進めるのだが、図面を書いては現場に行ってつくり、性能を評価するといった繰り返し。設計者も生産技術が解からないと図面がかけないし、生産技術も設計者の気持ちが解からないと、ものづくりができない。
ベクトルが合ったところで、生産技術が仕様書、技術書に落とし込んでいく。新しいボールネジ開発は、こうした連携でスタートした。

開発するにあたり、設備投資は十分なコストをかけた。
「設備はドイツ製なので、ドイツから専門技術者にきてもらい、侃々諤々やりました。言葉も通じないなか、加工法が全く違うわけですから、1からの立ち上げでした。
こちらからも数名の技術者を、ドイツの会社の工場に行かせました。面白いもので、ドイツ語なんて、誰もわからないですよ。でも、技術者同士は言葉はいらんのですね。ドイツ語も英語も話せないのに、ちゃんと仕事して帰ってくるんです」

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阿吽の呼吸というか、お互い悩むところは同じなもの。そこがピタっと一致すると、言葉なんていらないのかもしれない。

さて、この開発ゾーンは、ツバキエマソンにとっては大きな技術革新で、設計力(設計部隊)と生産力(生産部隊)がかみ合うところに成功の鍵があった。
しかし、ドイツとの言葉の壁は乗り越えられたものの、実際には、設計と生産の間には、大きな壁が立ちはだかっていた。

元来、事業部間の壁というのは、どこの会社でもあるものだ。特に、自分の専門分野を黙々と掘り下げ研究好きの技術部隊は、蛸壺にもぐりたがる。だが、それでは生産はできない。設計と生産が意見を出し合いながら、最適な方法を見つけ出す作業が必要だ。
そのためには、どうしたらよいかーー。

技術の人間を蛸壺から引っ張り出し、皆で声を出して議論することが重要で、これが、壁を打ち破ることである。

問題点を洗い出す

技術の問題点、ボトルネックは何か、全体最適でサプライチェーンをどうつくるか、
壮大なテーマに取り組みはじめると、様々な課題が浮かび上がってきた。
その最大の課題とは「無駄」。つまり、余計な物をつくりすぎて、工場の通路は在庫の山。使うのは1年後、という現実がわかったのである。

「完成品在庫は、回転率が悪かったんです。標準品をつくって、お客さまには製品にあわせてご使用いただくというのが一般的ですが、マスプロダクトはもう通用しない時代です。 逆転の発想で、お客さまの問題をどう解決するか、ということにこだわったのです」(小林部長)

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標準品ばかりやっていては、ライバルも存在し、過当競争には勝てない。顧客の問題解決とは、いかに、ユニークな商品をタイムリー(短納期)に提供できるか、である。
その解決策は、売れる物だけをつくる。今月売れたものを来月つくる。2個売れたら2個つくる。こうしたルールに徹した。
とはいうものの、現場の人間は、すぐに設備を動かし余計に20個、30個とつくりたがる。

「機械を止めろ、止めるんだ」
「 BU長、機械をとめよとはどういうことですか。生産性落ちますよ」
怒鳴る福井取締役に、現場の人間は怒り出す。

こんな毎日の繰り返しのなか、この文化をかえるのに3年の月日を費やしたが、ついに仕掛が減り、結果、リードタイムが半分になった。短納期の成功である。

「通路にものが有るわで、通られへん状態やったのが、何もあらへんようになったんです。ものが動くと工場が見えない。ある大手の工場に行ったとき、本当にものがないんです。ものがきれいに動くと、仕掛品が少なくなるんですね。
特殊品が多いだけに、いくらこった設計ができても、ものづくりがフリーズしたら終わりです。標準品であれば在庫でおけばいいんですが、いろんなお客さんのカスタマイズを、いかに製造系に落とし込んでいくかですから、お客さんに『そんな納期なら買わへん』といわれたら、それまでです。だからこそ、短納期は重要なのです」(小林部長)

こうして皆のベクトルが合いだし、ボールネジの開発は成功した。

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一昔前なら、各工程に仕掛がたくさんあり、そこを歩く社長が、「今日はよう、仕事をしているな、がんばってるな」とほめられたもの。仕掛の多さが忙しさの証明のようなものだった。
それが今は、ガランとした工場。それで、生産性はあがっているわけだから、いかに私たちのなかにある固定観念が邪魔をしているのか、ということがわかる。

前は、ねじりはちまきで残業していたが、今は定時に終わる。
加工の人間と組み立ての人間はろくに話もしなかった。敵だった。
今は、どうだろう。どうしたらものづくりができるのかと、あちこちで議論がはじまる。

「会社の壁を低くするということは文化をかえることになる。答えがあるはずや、と正解を探そうとするんですが、正解はないんですね。
それぞれの会社の文化があって、ものづくりの考え方があって、作業者の顔も、リーダーも違っていて、手法も違う。だから答えは一つではない。それを見いだすのに、苦労しましたがね」(福井取締役)

あるラインの納期達成率は、60%から95%にあがった。
「お客さんというのは、1ヶ月半かかると言っても、3週間くらいでお願いしますといってくるものです。これは世の常です。でも、我々は3週間でつくるんです」
その達成率であると言うから、凄い工場だ。

2008年度、ツバキエマソンは、最高の売上を記録した――。
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(…第3話につづく)

-魅力ある人の創造 魅力ある商品の創造 魅力ある工場の創造-

株式会社ツバキエマソン

http://www.tsubakimoto.jp/tem/company/

所在地: 〒679-0181 兵庫県加西市朝妻町1140
TEL:(0790)47-2525 / FAX:(0790)47-2529

取材協力 兵庫工場工場長取締役 福井豊明 様
作動機BU技術 部長   小林 豊 様
調達部 課長   山口 登実男 様