ばね探訪 - 東海バネのばね達が活躍するモノづくりの現場をレポート

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東海バネ工業株式会社

世界に一つしかない工作機械を作り続けて | 安田工業株式会社 様

第3話

【世界に一つしかない工作機械を作り続けて】安田工業株式会社様

「最大ではなく、最高をめざす」これが、安田工業の基本理念だ。では、最高とは何かーーこれまでは精度であったが、安田工業が目指しているものは、ちょっと違う。
7メートルレベルで動く機械だとか、超高精度機械は、既に世の中に存在するが、そこでは戦わない。

言葉にはできない記憶
受け継がれた伝統技術を武器に単品勝負に挑む

「最大ではなく、最高をめざす」これが、安田工業の基本理念だ。
では、最高とは何かーーこれまでは精度であったが、安田工業が目指しているものは、ちょっと違う。
7メートルレベルで動く機械だとか、超高精度機械は、既に世の中に存在するが、そこでは戦わない。

「超高性能機械というのは、それを扱うのにものすごくコストがかかりますから、資金力のある大手メーカーでなければできないんです。私どもは、大手のできないところ、町のジョブショップで使える価値のある機械を目指そうと思っています。ですから、温度環境に強い機械ですとか、自動化、行程集約、多機能、5軸の機械、これらを使っていただいて、付加価値が出せるかどうかです」
角田部長の思いは熱い。

①

大量生産で製品をつくると、結果的に競争力は生まれない。
そうではなく、大手ができないところ、ニッチな市場、顧客の要求に一つ一つ応えていけるところに、安田は勝負をかけている。

「『あー、この機械は違うね』と言われたいですね。ほかの機械よりも劣るね、といわれたら絶対に納得できないですね。色んな環境条件で使われていますから、最優先で問題解決します」

「ニッチな分野をターゲットにする場合、職人技術は不可欠。設計する段階から、かなり違ってきます。それこそ、3次元CADを使うと、どのくらいの力がかかるか、ひずむか、温度が変わるとどのくらい変形するとか、色んな計算が可能です。マシーンの伝統を重んずる図面をひくためにも、過去の図面をいかしながら書いていますので、このくらいの肉厚であるとか、ここにリブがいるとか、感覚的なものが他社と違うと思います。静的な合成と動的な合成、振動に対する減衰性、こうしたことを数値化して最適なものをどこに見つけていくか、これからの課題です」

熱、振動。これが難しく、どこのメーカーも頭がいたい。同じ環境でつくれば、静的な状態では精度は出せる。そこからどのくらい変形するか。実際に加工している条件での精度の安定性をだすのが、一番難しいところだ。

②

一方で、超高精度にも挑戦している。
通常つくっているマシニングセンターよりもさらに、超高精度に近い機械。ワークをのせて、自動で工具をはかり、ワークを測定する機能をつけるといった、比較敵、従来のマシニングセンターの使いかたに近いもので、もう一つ、高性能なものを目指した機種もつくっている。

心臓部で活躍する皿ばね

工作機械のなかで、ばねは色々な場所に使われている。
大きな重量を支えるアシストや、テーブルのワークとかパレットのクランプするところに使用される装置としての皿ばね、こうしたところは、数社のばねメーカーが採用されている。
そして心臓部ともいえるスピンドル、工具を実際に加えさせて回転させる部分にも皿ばねは使用されるが、ここは、ばね自体の精度、回転に対しての精度に加え、品質の安定、耐久性が揃っていないと、どこのものでも良いというわけにはいかない。

③

「これまでは、ただ、数をそろえて並べておけば力がでるといった使い方をしていましたが、そういう時代からしますと、耐久性、使用頻度が格段に一桁違ってきています。200万回といったオーダーで、繰り返して使っても割れない品質の安定とか、回転する場合の精度、皿ばねの断面形状も、以前はただ、プレスして曲げただけの時代から、最近は、角面がひっかからないよう仕上げています。スピンドルそのものの回転のスピードも、20年前までは、4500回転だったのが、12000回転が標準です。オプションでは、20000回転、30000回転、40000回転となってきています。
そうした数の多い、マスの大きなものは、高速回転を要求しますので皿ばねは重要です。引っ張るだけではない。いかに、回転に対して、アンバランス的な要素をもたずに機能してくれるかということが、非常に大きいです」(談:伏見氏)

品質の安定という面においては、東海バネの製品については、安心して使えると伏見氏は語る。
心臓部のバネなだけに、コストよりも実績だ。
こうして考えてみると、東海バネも単品勝負、つくるものは違っても、同じものを目指す会社の姿勢、目線は同じであるということだろう。

3回に渡って、安田のこだわりを追ってきたが、
冒頭の「最大ではなく、最高を目指す」とは、一つ一つの部品に裏打ちされた信頼性の高さだということが理解できる。

単品勝負のニッチなマーケットを狙うためにも、安田の伝統的技術は守り続けなければならない。そして伝統は、「人」がすべてであるが、安田工業の特長は、従業員の定着率の高さだ。
ほとんどの社員が定年を迎える。
「私が入社したころ、すでに初代職人さんの息子さんが活躍されていました。精度の話をするのは面白かった」(角田部長)

父親の背中から人生を学び、そして手から手へと技と知恵が伝わり、安田工業は単品生産を守ってきた。
言葉にできない記憶である。
だからこそ、世界に一つとないものを生み出しているのである。

④

~世界最高峰の超高精度マザーマシンの開発~

安田工業株式会社

http://www.yasda.co.jp/index.htm

所在地:〒719-0303 岡山県浅口郡里庄町浜中1160
TEL:0865-64-2511(代) FAX:0865-64-4535

取材協力 安田工業株式会社
技術部長 角田庸人様
技術部 機械設計 1課 技師 伏見元由様