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世界に一つしかない工作機械を作り続けて | 安田工業株式会社 様

第2話

【世界に一つしかない工作機械を作り続けて】安田工業株式会社様

工作機械メーカーにとって、精度に対する信頼性をあげる最初の難関とはなんだろうか。それは、測定である。「測定ができないレベルは、残念ながら立ち入れない状況でして、測定ができれば、どれだけ信頼性がおけるかということを、現場のもの、技術も含めて、感じています」

測定できること、ここからはじまる

工作機械メーカーにとって、精度に対する信頼性をあげる最初の難関とはなんだろうか。それは、測定である。

「測定ができないレベルは、残念ながら立ち入れない状況でして、測定ができれば、どれだけ信頼性がおけるかということを、現場のもの、技術も含めて、感じています」

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工場全体のレベルがあがっていかないと、次の高性能なものを扱うのは難しくなってくるという。どこかが突出していても、だめ。
全体のレベルが同じように上がっていかないと、うまくいかない。その最初のステップが測定だ。

精度の決めては「キサゲ」

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測定が重要であるというのは、ここに理由がある。

精度を追求するためには、高い精度を維持できる優れた素材を精密に加工する技術がなければならない。
その決め手が、「キサゲ」だ。

キサゲの柄を骨盤に押しつけ安定させ、一定のリズムで金属表面を削っていく職人たち。
平面をつくるにも、一番高いところから落としていくと、最後は平らになってくる。一番高いところが測れれば、次のステップに進める。また、高いところが測れれば、次のステップにいける。これを積み重ねていくと、だんだん高性能な平面ができてくるというわけだ。平面ができれば、今度は直角ができる。
製造現場では、何でも手で削れば良いということではなく、どう測れるか、こうしたら測れる、こう修正すれば良い、といったことを設計の段階から考慮しておく。
これが技術のノウハウ。そして、修正していくのが製造現場のノウハウだという。

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見て、さわって、体験する「精度」
では、精度を具体的に表現するとどうなるか。

「1ミクロン、0.5ミクロンとかの深さを変えて、YASDAの文字を掘った自由曲面の見本があるのですが、光らせるとわかるんですが、さわるとちょっとわかりにくいんです。数ミクロンのレベルになると、わかります。人の感覚というのは、数ミクロンがわかるのか、というのを体感していただくのと、それから、そうしたレベルで機械が動いているということを、体感していただくために、色々なところに持っていくんです。
見てもらって、さわってもらって、体感してもらうというのが一番良いのです」

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しかしながら、日頃接しない単位だけに、1ミクロンといわれても。どうもイメージがわきにくい。
もっと、わかりやすい表現に置き換えてみよう。

1ミクロンというオーダーは、1000分の1であるが、たとえば、600ミリ走って、真直度が2ミクロンというオーダーを、運動場の50メートル走に換算してみる。
600ミリを1000倍すると、600メートル。600メートルで2ミクロンということは、2ミリ。ゴールの600メートル向こうまで、2ミリの真直度という計算になるわけだ。

そういうオーダーでも、人間の手でさわるとわかるという。

プロがプロに売る、プロの眼

安田の製品は、どういった業種に多く使用されているのか。それは同業者だという。

「工作機械業界の方々に使っていただいています。自社製を設備していますし、私どもで設備できない自社製ではできない機械は、外部から購入してくるのですが、そのときのポイントは安定性。大量にものをつくりませんから、安定して精度がでて、信頼性の高い機械を選考します。精度の必要な部品は内製し、必要のないものは外部から調達しています。こうしたことも、同業の方々から使っていただいている理由だと思います」

プロがプロに売るわけだから、顧客の目は非常に厳しい。
特に顧客の要求の厳しい「精度」で選ばれているというから、
安田の強さが理解できるだろう。

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また、金型分野からも評価が高い。
「私どもの機械で、ダイカスト型や、鍛造型等を加工できるのですが、金型で鍛造だったり、プレス型だったり、一つの型で何万個とか、何十万個とかつくるわけです。当然、型自体は硬くないと耐久性がもちません。そこに焼き入れという行程があり、焼き入れることによって、硬度をあげる。
従来は、柔らかい状態で加工をして焼きを入れる。その後、また加工していたのですが、今は、硬いものをいきなり削っています。行程がグンと短くなるのです。工具自体も進歩しているので、硬いものを削るのに十分対応できます」

機械に要求されるものは、精度だけではない。硬いものを削ったときに加わる力をどう受けるか、振動の問題、そして硬いものを削る工具の寿命なども要求される。
「たとえば、主軸のバランスが悪く、刃がその都度、振動している状態で加工していると、工具の寿命が悪くなるのですが、回転精度をあげることで、どこまで寿命を延ばせるか、機械がそうした要求にどう耐えられるかを改良しています」

受注生産ではなく、ある程度材料を仕込んで、つくりはじめる。加工するときに水をかけたり、エアをかけたりと、その周辺のための装置が取り付けられるのである。

「XYZの三軸で構成されている機械は、2軸、1軸のテーブルであるとか、ワークが色々変えられるものをつけたり、お客さんの要望に答えられるレベルでお答えしながら、最終的に製品になっていきます」

一から仕込んででつくると半年はかかる。組み始めることろからいうと1ヶ月程。
製品の価格は、数千万円単位だ。

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フェラーリのエンジンに採用された実績

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「F1などのレーシング用のエンジンの試作に使われることがあります。残念ながら大量に使われませんが、、、、」

少し前の話だが、フェラーリの市販のエンジンで、安田の工作機械が採用された実績を持つ。業界でも大きな話題となった。

日本の工作機械は世界のなかでも、最高峰といわれているが、
フェラーリのような要求のハードルが高い会社だけに、他社と同じものをつくっていたのでは、こうしたチャンスには巡りあえない。
ここにも安田の強さが見える。

つづく・・・

~世界最高峰の超高精度マザーマシンの開発~

安田工業株式会社

http://www.yasda.co.jp/index.htm

所在地:〒719-0303 岡山県浅口郡里庄町浜中1160
TEL:0865-64-2511(代) FAX:0865-64-4535

取材協力 安田工業株式会社
技術部長 角田庸人様
技術部 機械設計 1課 技師 伏見元由様