第3話
【他の会社より一歩先を行け!】岡野バルブ製造株式会社様
企業の成長期には、様々なドラマがある。岡野バルブも、多くの人、企業に助けられてきた。
当時三菱の長崎造船所といえば、ボイラー用バルブで世界トップのホップキンソン社と必死で闘う岡野バルブを世の中に送り出してくれた一社である。その縁が、さらに新しい出会いをつくる。
企業の成長期には、様々なドラマがある。
岡野バルブも、多くの人、企業に助けられてきた。
当時三菱の長崎造船所といえば、
ボイラー用バルブで世界トップのホップキンソン社と必死で闘う岡野バルブを
世の中に送り出してくれた一社である。
その縁が、さらに新しい出会いをつくる。
一期一会 東海バネ工業とともに
昭和7年、ステライトの溶着技術を確立した岡野バルブは、当時ボイラー用バルブの生産において、世界でもトップの技術をもっていた英国のホップキンソン社の製品と、鉄道省川崎発電所で公開比較試験を行った。その結果、岡野バルブの製品の優秀さが広く認められた。
「お前のところは、信用ならん。うちは世界で定評のあるホップキンソン社のバルブを使う」
「なんとか、うちのバルブを使ってもらえないだろうか・・」
門前払いの日々に、創業者の満氏は頭を抱えていた。
そんななか、「岡野のバルブは間違いない」と、全面的に信用してくれた人物がいた。当時の三菱長崎造船所の造機設計部長だ。
長崎造船所の応援あって、現在の九州電力戸畑発電所へ使用圧力40kgf/cm2・
使用温度435℃国産第一号となる主蒸気止弁を初めとする多くのバルブを納品することができ、それがきっかけとなって、あちこちから注文がくるようになった。
「岡野のバルブは大丈夫だ」
ついに、世界のホップキンソンから岡野のバルブに、歴史を塗り替えた瞬間である。
創業者の満氏は、長崎造船所へと、足しげく通ったものだった。
そんなある日、資材担当の人が、「バルブにはバネも使うのでは?いい人がいるよ」と引き合わせてくれたのが、東海バネの創業者である南谷社長だった。
東海バネも長崎造船所に出入りをしていた。
これが最初の出会いだった。
長崎造船所においては、救いの神と、出会いの神が同居しているようなものだ。早速、東海バネのバネを使ってみると、品質は抜群。トップ同士、同じ文化の匂いを感じたのか、すぐに意気投合。
こうして、岡野バルブと東海バネの交流が始まったのである。
「東京へ出張に出るときは、必ず、大阪で下車して東海バネを訪問し、親交を温めていたという話を良く聞いたものです。大阪では、創業者専用の車まで用意してくれていたとか。東海バネさんの技術の高さを、創業者は十分に理解していたのだと思います」(江副取締役)
技術一筋の会社同士、つくるものは違っても、生き方は同じだ。
そんな両者の付き合いは、今もなお、続いている。現在の3代目正敏社長と、東海バネ2代目の渡辺社長は、兄弟の契りを結んだかのように、懇意の仲であるという。
東海バネのバネはどこで活用されているのかというと、主として安全弁に使用されている。安全弁というのは、圧力容器の過圧防止の目的で設置されるもので、運転圧力が設計圧力より大きくなった時に、圧力容器内の圧力を逃がし、容器の破壊を防ぐため、設計圧力以下に抑えるというもので、その中の性能を決める一番重要なものが、バネである。
「通常バネというと小さなものを想像するかも知れませんが、東海バネさんに作ってもらっているバネの中で一番大きいのは線径φ84㎜のコイルを巻いてもらっています。当初は、30㎜~40㎜位だったと記憶していますが、今の84㎜コイルとなりますと、東海バネさん以外製造できるところはありません。このバネがないと原子力発電所で使用される主蒸気逃がし安全弁で製作ができないというくらい重要な部品なのです。ですから、仕様も非常に厳しく、バネの開発に2年間かかりました。
バネを作るのになんで2年も?と誰もが思うかもしれませんが、バネにも色々なノウハウがあります。表面だけが良くてもダメ、中まで精度の高いものでないと使用できないのです」
バネというのは、押し続けていると、リラクゼーションが起こり、ばね性能が変化してくる。長年使ってもそのばね性能が変わらないというバネを作らなくてはならない。その開発に2年間を費やした。
これも、ものづくりに魂込めた会社同士ならではの関係といえる。
そうでなければ、60年以上の付き合いは、なかったであろう。
バルブ業界が、不景気に追い込まれたときも、「まけてくれんか」と言うと、「持っていけ」と言う。そんな信頼関係だった。
「人のマネをしない」、「一歩前を行く」これは、岡野バルブの社是であるが、東海バネも、同じである。
多品種少量(微量)生産、両者が掲げるそれぞれの戦略だが、人がやらないこと、つまり、人が(大手が)できないことを、岡野バルブ、東海バネはバルブの分野で、バネの分野で、やっているのである。
この志は、ものづくりの会社であることの、証明なのかもしれない。!