第2話
【世界の真ん中はここだ!ショウエイのセンシティブチャレンジ】株式会社ショウエイ様
女性だけの引っ越しスタッフチームが業績を上げているかと思えば、葬儀屋の某大手では主婦だけですべてを執り行う。女性だけの建築会社も誕生と、世の女性たちは、これまで踏み込めなかった「力仕事」という男性の領域も、いとも簡単に侵してしまった。そんななか、辻井社長はもっとも崩しにくかった「男の牙城」である町工場に女性投入を試みたのである。
第2話 発見ー創造の女神たちが息づく村
取材協力 代表取締役 辻井説三 様
「女性仕事師集団」時代の幕開け
女性だけの引っ越しスタッフチームが業績を上げているかと思えば、葬儀屋の某大手では主婦だけですべてを執り行う。
女性だけの建築会社も誕生と、
世の女性たちは、これまで踏み込めなかった「力仕事」という男性の領域も、
いとも簡単に侵してしまった。
そんななか、辻井社長はもっとも崩しにくかった「男の牙城」である町工場に女性投入を試みたのである。
それは、過疎地という人材採用皆無の環境から生まれた苦肉の策だった。
「過疎から発信しようと思えば、人と違うことせないけん。
目立たないけん。こうした地の利を活かすのは大事なこと。
男性だけだと選択肢は一つ。
若手を採用しようと思っても、少子高齢化になっているので難しい。
そこで、女性の活用に着目しました。
同じ活用するなら、男性と同じ待遇でマイスターをとってもらおうと考えたのです」
当初、これに対しては皆、反対だった。
「鍛冶屋に女性?技能?」
しかし、辻井社長にとっては採用の選択肢を二つにすることが先決。
ショウエイでは、インジェクションコントロールという燃料噴射装置を作っているのだが、
そのランダムクリアランスは、2ミクロンから3ミクロンと、非常にきめ細かい公差である。
そうした対応には、男性よりもきめ細かい女性の方が向いているのではないか、と辻井社長は考えたのだ。
そこで、女性を対象に採用を行ってみると、
意外にも、結婚で地元を離れなかった女性など、潜在能力の高い女性たちの宝庫だったのである。
「よし、この女性たちにかけてみよう」
検査から出荷までの工程のなかには、機械加工、熱処理、組み立てもある。
早速、男性と同じことをやらせてみると、辻井社長のよみ通り、機械加工も、検査も、非常に感性が高かった。
「1年採用してみて、女性のすごさがわかった。
男性には持っていない、精度の高さがあるのです。
驚いたのは、自分の手帳に加工の手順の絵をびっしり書いている女性がいました。覚えようという意識がものすごい高いのですね。
どうやって意識づけさせるかが、管理者として大事なことなんです。
「覚えとけ」だけではだめですよね。
意識するうえで大事なことは、好きになることです」
好きこそものの上手なれ、というように、これが一番、腕のあがる方法かもしれない。
そんな女性たちに、共通しているのが積極的な自己アピールだ。
「社長、私ここまでできるようになりました」
女性は、どちらかというと、悔しさ、喜び、怒りといった感情を全身で表現する性分である。
その自己アピールが励みになり、どんどん成長を早めるという。
「ドーパミンがどんどんでてくるんですね。それをこちらがしっかりと受け止めることです」
とにかく、この女性たちを一人前にしなくてはいけない。
柱となる男性社員を鍛え上げることも忘れてはならない。
辻井社長は、 経営が苦しい中でも、徹底して教育に力を入れていった。
会社の一番の武器は「人材」
一方、悪化していた経営状態は徐々に回復、なんとか危機は脱した。
岡山県大原町に移って来て10年目、ようやく売上3億円を達成。
同時に、部長から社長へ就任、晴れて2代目の誕生となったのである。
地域との信頼関係も徐々に築きはじめたある日、
「この子入れてくれんか」と、母親が連れてきた青年を入社させたことがあった。
一見、ワルに見えるが、彼は根が素直でとにかく頑張屋。
みるみるうちに成長していったのだが、ある時、「社長、髪の毛自由に染めさせてくれへんか」と、言ってきた。
「お客さんの手前、それはアカンやろ・・・・」と悩むなか、
自分の考え方を変えなければならないと思ったのである。
「会社という狭いルールのなかで社員を育成していたら、個性がでない。
考えてみれば、ライフスタイルいうのがある。
会社が終わって帰宅したあと、あるいは休日、自分の好きなスタイル、好きな車にのっているときは元気がええわね。
しかし、一歩会社の敷地に入ると、「これせー、あれせー」といわれるから個性でんなぁと。
そこで、「二十歳迄じゃ」と、許可したんです。
そのかわり、ルールをきっちり守れよと。
そうしたら、不思議と社員の個性が出てくるようになったんです。
何もいわなくても、自然に顧客に感謝の気持ちを持つようになったんです」
若手が望んでいるのは、 ギスギスと管理されるのではなく、
自由にのびのびと仕事ができる環境。
そのなかで向上心を持って目標に進んでいくことは、会社に管理されるより難しいことである。
会社も管理するほうが当然、楽なのである。
しかし、辻井社長は、社員の個性をのばすために、その可能性を信じた。
一番大事なのは、社員が明るくなること。楽しい会社にするのは、社長の仕事
「会社経営を掘り下げていくと、哲学の分野に入ってきます。
金儲けするために経営者になったというのは経済的効果だけの話で、
社員を幸せにしたいというのが、本当の姿だと思います。
そのことさえ忘れんでやってたら、間違った方向には行かへん」
経営哲学のなかで、自分はものづくりで何を目指すのかを考え、
またどういう商品であれば競争力が強くなれるかをとことん追求した結果、
一番大事なことは、社員の幸せ感が生む、モチベーションだったのである。
どちらかというアウトロー的な社員を面倒みてきた辻井社長だが、
難題をもってくる社員がいればいるほど、
社長は考えるから鍛えられる。
自分を伸ばしてくれるのは、社員やとも語る。
こうして、人材強化が業績向上を生み、色々なことが好転しはじめた。
96年には工場新設、2002年には岡山県商工労働部経営支援課認定を受け、
光触媒車内用脱臭製品の開発、販売など新しい分野の取り組みにも成功した。
冒頭取り上げた女性の育成は、 現在、女性は20名 。
5年くらいでマイスターをとる計画をたてている。
3年目の女性が2人おり、1人は昨年、IHIの技能検定2級を取得した。
辻井社長は、「時間かけてゆっくり女性を鍛え、本物をつくらんと」、と語る。
人間を育てたことで、
見事に会社は強化されたーー
第3話では、世界にむけて戦うショウエイの経営戦略を紹介する。
ショウエイ
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