第2話
【安全弁を究め、安全弁に生きる】株式会社福井製作所様
「信頼と実績を積んでいくことの繰り返し。
革新的な技術だけでは、絶対にマ-ケットから受け入れられない。
まず、実績。 舶用分野、発電分野、資源開発分野、それぞれの分野の特徴・ニ-ズは?」
第2話
受注生産の単品勝負!信頼と実績の積み重ね
「信頼と実績を積んでいくことの繰り返し。
革新的な技術だけでは、絶対にマ-ケットから受け入れられない。
まず、実績。 舶用分野、発電分野、資源開発分野、それぞれの分野の特徴・ニ-ズは?」
東京営業所開設時のエピソ-ドで、製品を開発し、自信を持って大手企業に販売に訪問した際、「実績が無い」という理由で話しさえ聞いてもらえない時期が長く続いた。
営業担当は、プラントの特徴・ニ-ズを調べ、根気よく製品の性能/信頼性を説明し契約することができた。
それから福井製作所は、マ-ケットニ-ズに応えるための製品開発、品質・信頼性向上への挑戦が始まった。
「お客様の要求は年々厳しくなっています。使用圧力一つとっも、超臨界の世界では30Mpaという仕様もあります。 40年前なら1Mpa~2Mpaが主流でした、この工場ができた当時の試験設備の仕様は確か3.5Mpaでした、その後6Mpa、12Mpa、22Mpaとスケ-ルアップしました。
これらは、すべてお客様、マ-ケットニ-ズに応えるための設備です。
技術も3.5Mpa時代の技術では、30Mpaの超臨界世界では通用しません。設備のスケ-ルアップにと共に技術を確立し、検証を重ね、信頼性を高め、実績をつけなければお顧客ニ-ズに応えられなくなります。」
(柳本取締役部長)
技術開発とは、常に革新しなければならない。
そのために、受注したJOBを設計し具体化する設計部隊と、顧客ニ-ズから製品を開発する開発部隊に分かれている。
マ-ケットニ-ズに合った製品を提供できなければ福井製作所の存在価値は無くなる。
とはいうものの、社内検査だけで製品性能のすべての問題点が解決できるわけではない。
実際の機器に取り付けられてわかる事も多い、製品開発は現地・現場から多くのことを学び、次の技術開発へとつながる。
福井製作所の技術開発は決して自己本位ではない、お客様から、現場からのニ-ズに応えるための開発である。
「見た目には、昔の安全弁と今の安全弁と大きな違いは無い、しかし、要求内容、用途、機能は全然違いますね。使用する材料、部品精度など大きく変わっています。
バネもその一つですが、昔は線経20ミリくらいでしたが、現在は65ミリを超えるものもあります。大きさも相当大きくなっていますね。」 (資材統括チ-ム長 横田)
福井製作所の経営戦略は、受注生産が基本です。 部品加工ではNC旋盤などの自動機を使い大量に作る工場が多い。
しかし、福井製作所は従来の汎用旋盤も現役で活躍している。汎用旋盤、NC旋盤、最新鋭の大型複合機械を導入し、組み合わせて一つ一つの部品精度を高め、量ではなく質を追求している。
『すべての工程で単品で勝負!』 これが福井製作所の経営戦略。
「数多く作るだけなら、すべてNC旋盤で加工したほうが早いし安い、安く作るだけなら海外で作る方法もあります。
しかし、私たちは、重要部品のほとんどを自社工場で製作します。理由は、一つ一つの部品がお客さまの仕様にあったものでなければならず、品質も高くなければならないからです。
つまり、同一規格のものを大量に作ればよい、安く作ればよいといったものではないのです。
部品一つ一つの精度を高め、品質を高めることが、信頼を得る唯一の方法なのです。」
(柳本取締役部長)
「安全弁の組立は手づくり」 精度の高い部品ができても、組立はまさに手づくり。
規格部品を組立てるだけで製品完成とならないところが難しい。
安全弁の組立はまさに職人の技、部品と部品の摺り合わせや互いの部品がしっくりなじむよう手を掛けなければならない。
職人の経験と勘が活かされる工程です。図面に表すことのできないノウハウもあるのです。
「最終的には、金属と金属を合わせてガスや蒸気、液体を止めるのです。 金属表面に微細な傷や切削加工跡が僅かでも残っていると流体を止めることはできません。
接触面は研磨材と金属の表面を摺り合わせて平面度と表面粗さ精度をあげ、密着精度を限りなく高めます。仕上げの表面粗さは0.1ミクロン以下です。
この精度があって初めてシ-ト面の気密性が保たれるのです。この摺り合わせ工程を安全弁が取付られている現地でおこなうこともあります。工場内であれば機械による摺り合わせも可能ですが、現地ではすべてが手作業でおこなわれます。この作業は、経験を積んだ職人でなければできない作業です。」
「旋盤作業、機械加工も同じことです。 上手い人、不得意な人、先天的なものがあります。 努力である程度上達しますが、最後は個人の資質です。安全弁の摺り合わせができることは、やはりその人個人の技術と言えます。」 (柳本取締役部長)
「実は、私も以前に安全弁の摺り合わせを手伝ったことがあります。結果、専門の担当者に交代しました。とても無理(笑)。 やはり、最低でも10年はかかりますね。」 (横田統括チ-ム長)
摺り合わせは、磨き定盤・研磨材・職人の手でおこないます。 手にかかる抵抗で磨き具合を計り、幾種類もの研磨剤を使い分けます。職人によって磨き上げられたシ-ト面は、鏡のように見事な輝きを放つのです。
第3話は、福井製作所が今取り組んでおられるテ-マ、今後の課題についてお聞きします。!