ばね探訪 - 東海バネのばね達が活躍するモノづくりの現場をレポート

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東海バネ工業株式会社

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2013年10月16日

新工場。巻取り工程、稼動開始!

台風26号の影響でしょうか。豊岡は昨夜から風が強く吹いています。

今、高く青い空には白い雲が足早に過ぎ去り、澄んだ空気のおかげで
雲間から時折届く日の光は、
この季節らしからぬ強さをもって、新工場の白い壁を眩しく照らしています。

さて、
先日、豊岡神美台の熱間新工場において、初めての製品の熱間巻取りを開始いたしました。
なんとかかんとか、この新工場でのモノづくりの第一歩を踏み出すことが出来ました!
本日はその詳細を豊岡工場勤務の hy よりご報告いたします。

新工場での巻き取り加熱は「誘導加熱」にて行います。
熱間コイルばねの加熱方法としては
世界的に見ても、類を見ない画期的な方法ではないでしょうか?
うまくいけば、どんな太径材でも巻取り工程の脱炭を限りなくゼロにできる夢の製法です! 
しかし!
前例のない事に初めて取り掛かる、という時は困難がつきものです。
思いもよらぬトラブルや現象に翻弄されるものです。
ご他聞に漏れず、我々のこれも当初、全くそのとおりでした。
なにをやっても思った性能に至らず、試しては失敗、試しては失敗の連続でした…。
そんな状況でも、
こちらのメンバーはあきらめず、粘り強く、毎晩遅くまで、チャレンジを続け、
ついに太径巻き取りにおいても脱炭のない製法を実現しました!!
このチャレンジについての詳細はご報告を割愛いたしますが、本当によく頑張りました。
この達成感はハンパないです!

で、当日の様子です。

初品は、よりにもよって、どーんと線径φ70㎜の太径材!これを巻き取りますよー!
まずは誘導加熱の加熱条件を制御盤に入力します。
入力値は実験結果から決定した最適条件で。

巻き取り担当のA田さんによる入力。
まだ慣れていないのか、その手つきはこわごわ慎重…
設定入力が終わると、誘導加熱器のスイッチオン! 
材料投入すると、加熱が開始されます。

初品の投入は、
この設備の企画、設置、そして稼働までを一手に担ってきた技術開発グループのK谷さん自ら。
豪華客船の進水式のごとき厳かさです…。

そして、

加熱開始!φ70が電磁誘導加熱コイルの中に毎秒およそ10㎜のスピードで送られていきます。 
電磁誘導がはじまります。

“キィィィィーーーーーーーン”という耳をつんざく音。

これが電磁誘導特有の稼働音です。
何をやってもうまくいかずチャレンジと実験を真夜中まで続けていたあの日には、
断末魔か悪魔の叫び声にしか聞こえなかったこの音も、
今日は、なんだかちょっと高い音色のファンファーレに聞こえます。

これは保温炉側面にある炉内ののぞき窓。
炉内はすっかり900℃の色合いです。そのなかの上半分が少し暗いのが分かりますか?
これが保温炉内を進むφ70材です。

しばらくして、保温炉出口扉を開けて中を見てみます。
「OK!いいでしょう。巻いちゃいましょう!」とA田くん。
保温炉出口扉を全開にして、送り出しローラーを稼働します。
旧工場の加熱炉と違って開口部の面積が広くないので、今までのような全身を覆うような熱風を浴びることはありません。

出てきました!

充分に巻き取れる温度色です!先輩巻取り士のO森さんも助っ人として急きょ参戦!
慌てたのと、興奮のあまりヘルメットを脱いじゃいました。
ちゃんとヘルメットを着用しなさーい!

ちなみに私はこの時、保温炉の出口扉を操作する任務を任ぜられておりました。
私の前を眩しいくらいのオレンジ色の光を放ってφ70が進んでいきます。
目の前を通る時の皮膚が痛いと感じるほどの熱…。
その熱を感じながら、
ついに新しい熱間巻き取りがはじまったんだなぁ、、、とちょっと感動…。ジーン…。
 

力強く、そして慎重にスーパーコイリングマシンYUKIのケリ部分にφ70を挿入します。
「ヨシ!」の掛け声をうけて、YUKIの操作盤の前に立っているK宮くんがYUKIの操作盤をあやつります。

まるで氷の上を滑るような滑らかさで、6軸制御のSCMは稼働し始めます。
太径φ70をスルスルと巻き取っていく YU-KI。
「なんかいつもより調子いいみたいです。」とA田くん。
フルメンテナンスの効果か、それとも誘導加熱の温度がよかったのか?はたまた、久々の仕事に張り切っているのでしょうか?


巻き取り完了!と気が付けばすでに12時をとおに回って、お昼休みまっただ中。
社内からギャラリーが集まってきていました。


初めての巻取りですが、実にスムーズに完了することが出来ました。
すごいすごい、と思っていたら横にいたA田くんが舌打ちまじりにボソリ。
「あー…、材料切断、ちっと長すぎだな…。」

はじめての取り組みには多少の失敗はつきもの。でも、十分リカバーできる失敗でよかったね。

…φ70で材料長いときの取り外し作業、むちゃくちゃ、あっついけどね…。

で、巻き取り作業完了!

 

巻き取り後の外観を見ると、以前とは一味違う様子。
炉内酸素濃度がとっても低くなっているので、酸化がすすまないからでしょう。とにかく全然違います。

そんなこんなで、1オーダー分φ70㎜4本の巻取りが完了!
この日は調子に乗って、このあとφ60を4本、φ50を1本巻き取り完了しました!
明日以降もじゃんじゃん巻いていきますよー!本日の報告は以上!  

この後、新工場での熱処理に突入だー! 

 

Written by hy

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